六十回目
「うんうんそれで? なんで俺のことつけ回すの?」
私は一人の女性から、愛の告白を受けていた。私が入った(?)男性は繊細な飴細工を作っている。夢の森のような、おとぎ話に出てくるような幹の一削ぎ、葉の一枚まで拘り抜かれているのがわかる。
女性は地べたにぺたんと座り、男性の手つきに見惚れながら、訥々と告白を続けた。
「あなたが美しいからです……あなたが生み出す数々の作品の美しさに、私は毎度、胸を打たれておりました。それを作っているのはどんなやつだろう、と思っておりました。それがあなただったんです。足の先から指先に至るまで、飴細工よりも繊細で、それでいて大胆な作りのあなたに、惚れずにはいられませんでした」
その魅了が、私を引いて離さないのです、と女性は告げる。
この女性の正体を私は知っている。「夢の城に取り憑かれて」に出てくるサイコパスな飴細工師だ。夢の城を作るために機械人形を使っているこの女性が、飴細工を一から百まで手作業で作り上げる青年に恋をして、青年の動きをトレースするためにストーキングするのだが。それは次第に歪んだ恋に変化して、彼女は男性を求めるようになる。
が、恋愛のれの字にも微塵も興味が湧かない私と同様、この男性も恋愛には興味がなく、結構おざなりに答えている。
上の空というか、飴細工を作りながらなのでほとんど聞いていない。ただ、ストーキングされていた事実には怒っている、といった感じか。
それで怒られるのだが。
「夢の城の完成には、あなたが必要です」
「へえ」
「だから、私の工房に来てください」
「拒否権ないわけ?」
すると女性は、なんでもないように、アイスピックを青年の喉にあてがった。つまり、拒否権はない。……人権もなさそうだ。
大きく肩を竦めた。
それから、彼女の工房に行き、彼はその工房の機械人形を見て、最後の言葉を放った。
「玩具箱みたいだな」
よくわからないが、その一言に彼女はひどく怒り、男性を殺してしまった。




