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五十九回目
ちょきちょき、というのははさみの擬音によく使われるが、紙を切る道具としてのはさみはそれでよくても、髪を切る道具としてはもっと掠れた繊細な音がしている。
転生して便利なのは、体が技術を覚えていることだろう。でないと詰む。そういう職業はたくさんあるが、特に床屋はそうじゃないだろうか。
まあ、この後刺されて植物状態になるのだが。
ここはヤンデレ系たちが拗れに拗れた恋愛群像劇を繰り広げる「闇のその都度」という昼ドラチックな漫画の世界観である。その中で私は数少ないまともキャラの重森啓に転生した。
まともキャラに転生したのはいいのだが、重森はまともだからこその受難を受ける。可哀想な役処だ。嫉妬されたり、独占欲に振り回されたり、挙げ句の果てに「私の中で永遠になって」と刺される。しかも死ねずに植物状態という……昼ドラか、と突っ込んだが、まあ、重森啓とはそういうキャラである。
男女問わずに髪を切ったり褒めたりするのは床屋なのだから仕方ない。それをわかってくれないヤンデレや地雷って面倒だな。
「ねえ、啓くん、私とはさみ、どっちも大事だっていうなら」
背後から、一突き。
「私がはさみで殺してあげる」




