三十七回目
「鬼はー内ー、福はー外ー」
そんなあべこべな言葉が耳に入ってきて、目をぱちくりと開けた。「鬼は内」なんて昔話でしか聞いたことないぞ。
とことこと声の聞こえた方へ行くと、昔話シリーズに出てくるみたいな茅葺き屋根の質素な家が見えてきた。声からするに、今日は節分で、豆まきをしているのだろう。
豆を撒くのは「魔を滅する」からだと聞いたことがある。ちなみにとある地方では「鬼は内」というのが伝統だったりもする。まあ、嘘か本当かは知らない。なんせうちは「鬼は外」でやっていたから。
とことこと歩いていたつもりなのだが、効果音がどすどすなので、何事と思って見下ろすと、これまた昔話アニメに出てきそうな典型的な赤鬼だった。まあ、人外転生にも大概慣れてきた。人の形をしているだけまだいいだろう。そう割り切れるくらいには。
声のした家屋を覗く。大方、かの昔話なのだろうと思ったが。
かしゃん。
ばぁんっ。
……え。
猟銃構えたじいさんに脳天ぶち抜かれましたが?
嘘でしょ、こんな即死オチってある? そりゃ即死オチは何度もあったけどさ! ここまで伝統的な昔話風だったのに昔話ぶち壊して大丈夫? 版権引っ掛からない?
……あ、版権引っ掛からない? で思い出した。これは「そういうアニメ」だ。
確か「王道昔話に物申す」とかそんなタイトルだ。馬鹿なのかと思った作品の一つである。昔話は著作権的には大丈夫なのだが、「子どもが幼少に学ぶ昔話をあまりに逸脱する行為の描写は子どもの精神的成長によくない」というペアレンツアンドティーチャーアソシエーションからの指弾により、早々に打ち切られた駄作アニメの名作だ。
一ついいだろうか。
紛らわしい!!




