三十三回目
気づいたら、走っていた。新しい体は走りながら寝てたの? 器用だな。
それで、なんで走っているんだ……っ!?
頭から足まで、全身がすっぽり隠れるような真っ黒なローブ。大鎌を携えたそれは他に見間違いようがない、「死神」だった。
私の記憶が先か、こいつの本能が先かはさっぱりだが、死神から逃げるために爆走していた。
ここはたぶん、フリーホラー脱出ゲーム「出会い頭に殺しましょう」の世界観だ。
ディアボロと呼ばれたこの作品は主人公たちが突如「迷界」という世界に呼び出されるところから始まる。かなり悪魔的作品で、迷界の中からたった一人だけ存在する賢者を探し出して迷界から脱出しなければならないというゲームである。
クラスメイトの何人かと飛ばされてきたので、手分けして情報集めをしつつ、迷界にさまよう命を刈ろうとする死神から逃げるゲームだ。時間をかけすぎると次々クラスメイトが死んでいってしまうので、初見クリアも中堅クリアも難しい鬼畜ゲーとして語られた。
しかしこれが、運がいいとかなり順調に進んで、鬼畜な分の達成感があると評判になり、それなりのファンがいる。ディアボロファンは漏れなく「ドM」と呼ばれた。
これは姉がはまってやらされたことがある。姉は初見クリアをしてすごいはまった。私もゲームの評判くらいは聞いていたので、姉がドMかもしれない事実に引いた記憶がある。
私は運ではなく、単純にチェイスが上手く、死神との追いかけっこを楽しんだ。チェイスだけで四時間遊んでいたら、母に「いつまでゲームしてるの」と怒られたし、姉に「賢者見つけなよ」と呆れられた。
チェイスは得意だが、賢者を見つけないとこのゲームは終わらない。まあ、姉の指摘はもっともだったわけだ。
して、この体は主人公榛葉ミノルの友達の友達、結茂カオルのものだ。こいつ、わりと最初に死ぬような気がするんだよな。
一緒に飛ばされたクラスメイト十名ほどが死ぬ順番は公式には明かされていないが、おそらくカオルは最初に死んでいると言われている。
それは時間経過と共に仲間がどんどん殺されていくのを逆分析した人が呟いた考察である。仲間が生き残っていれば、一緒に脱出できるらしいが、かなりの速さじゃないとカオルは一緒に脱出できないらしい。開始五分以内と言われている。四時間もチェイスする私はカオルを助け出せた試しがない。
だが、言えば私はチェイスのプロである。カオルでもワンチャンあるのでは?
……と思っていた時期が私にもありました。
賢者を見つけた途端に死神に囲まれ、その向こうで賢者が微笑む。
「バイバイ」




