三十一回目
「ルナくーん」
呼ばれてパチリと目を開けると、アダルトな感じの店の中にいた。ルナ、と呼ばれたが、体は男である。ということは嫌でも「源氏名」という言葉がちらつく。
「開店準備手伝ってよー」
「ああ、サラか……」
サラと呼んだがこいつもまた男で、サラは源氏名である。本名は知らない。
何故知っているかというと、まあ、皆さんお察しの通り、私が読みはまった漫画の世界である。
ヤンデレにどっぷりはまった時期があって、病み系女子がホストに貢ぎまくる漫画「なんでもかんでも思い通りになるとか思って」にはまった。
まあ、キャラのビジュアルが好きというのもあったが、主人公の病み系女子ミアネのルナへのはまりっぷりを見て「こんな女になりたくないね、ハハッ」という形ではまっていた。はまり方も病んでいたように思う。
さすがにホストとホステスなだけあってビジュアルがいいのだが、やってることがカスなので、人気の作品というわけではなかった。私でさえ、今にしてみれば大した作品ではなかったと感じる。
「ミアちゃん今日も来るかな?」
「来るだろう。半ばストーカーだ」
「ヤッハハッ、刺されないようにね」
フラグ建設ならお任せのサラである。……これが刺されるんだよなぁ。
そう、ルナはミアネに刺され、ミアネは精神病院送り、ルナは死亡する。
なんでまた死亡キャラに転生してんだよ!?
もう嫌だ。私が何をしたっていうのさ。なんで元の意識保ったまま死亡キャラ転生続けるわけ? この世に神様なんていない。
まあ、この「難関」の世界にも神様とかはいなかったんだろうけど。
憂鬱なまま、夜を迎える。
「ルナたーん!!」
「ミアネ……」
抱きついてきたミアネは……ルナの首にナイフを突き立てていた。
もう、痛いのかどうかもわからない。
潔く目を閉じた。




