表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/100

二十八回目

 ふっと意識が浮上した瞬間、目の前に見えたのは思い切り包丁を振りかぶる女の子。

 ざくっ。

 ……痛みはない。現実味もない。何故かというと、私の今回の体から出ているのは血ではないからだ。

 まあもう幾度となく人間じゃないシリーズをやってきたので、今更ぬいぐるみごときじゃ驚かない。何故切り裂かれたかはさっぱりだが。

 茶髪に宝石のように綺麗な緑色の目を持つ少女はカラット。くまのぬいぐるみジェシカと唯一無二の友達である。

 カラットはちょっと天然で、浮世離れしていて、近寄りがたく思われているのか、友達がいない。気味悪がられてまでいることをカラットは知らない。カラットは人の悪意を認識しない幸せな女の子だった。

 ただ、遊び相手がジェシカしかいないので、ぬいぐるみとおままごとをするしかないのだが……

「ジェシカ、かくれんぼするよ」

 やはり、これは「ひとりかくれんぼ」の話らしい。カラットとジェシカが出てくるのは絵本。とてつもないバッドエンドである。

 この物語のひとりかくれんぼは正式な手順を踏んでいない。何故なら、カラットはジェシカを友達で、かくれんぼしたら探してくれると思っているからだ。

 米を入れられるわけでもない、縫い直されるわけでもない、奇妙なひとりかくれんぼ。でもジェシカはぬいぐるみだから、動くことすらできない。

 そんなときだった。

 カラットの悲鳴が聞こえた。それから、足音が近づいてくる。この子どもらしいとてとてとした足音は間違いなくカラットのものだ。

 やがてカラットがジェシカの元にやってきて、ジェシカをぎゅう、と抱きしめた。

「ジェシカも隠れなきゃ。悪い人がやってきて、ジェシカも私も傷つけようとしているわ」

 悪い人。それは強盗だった。包丁を持っていて、やがてカラットを見つけると、ジェシカを守るカラットをずたずたに引き裂いた。ぬいぐるみが引き裂かれるより、痛々しい。

 カラットが力尽きると、そいつは血塗れのジェシカの首をちょん切った。

 カラットの面倒をろくに見なかった親たちが帰ってきて、カラットの亡骸に咽び泣く。

 でも、私にはわかった。

 この家族は周囲から浮くカラットが邪魔で、邪魔だから消した。もしくは、ジェシカを与えたことを後悔しているのかもしれない。ジェシカがいなければ、カラットは他の子どもたちと交流したはずだ。それなのに。

 ジェシカはカラットの忘れ形見になることなく、四肢をもがれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ