二十七回目
ぴこん、という電子音で、私の意識は目覚めた。
ネトゲの世界にでも転生したのだろうか、と思っていると、薄く透明な壁越しに大きな指が見えた。顔は女の子のように見える。
「やったー、まもるくんスタンプだー!」
……まもるくんスタンプとな?
うーん、どっかで聞いたが、そんなスタンプあっただろうか。これまで非現実な世界だったので、これがどういう世界かわからないけど。
「早速使ってみようっと」
少女の手が私をタップする。……え?
『ありがとう!(花が飛んでいる)』
……まさかとは思うが、もしかして私が「まもるくんスタンプ」とやらになったのか?
いやいやいやいや、いくらなんでも冗談きついよ。スタンプになるって何それ。意味わかんないんだけど。
ぴこん、とまた可愛らしい電子音が。今度は「どういたしまして」とお淑やかな少女のスタンプが送られてきた。これって、SNSのスタンプだよね? つまり?
──スタンプに転生した、と。
でも、スタンプはスタンプらしく、格式通りのことしか話せないらしい。「ありがとう」とか「お疲れさま」とかしか言えないらしい。
いや、この転生何の意味があるの?
まもるくんスタンプというからには私が転生したのはまもるくんなのだろうが。こんな一介のスタンプなんていちいち覚えていないだろう。けれどなんだか聞いたことがあるな……
そうして、少女のお気に入り認定になったまもるくんスタンプとしての役目を行使していたのだが……
「え、『まもるくんスタンプ』全面削除!?」
おっといきなり不穏な文字列が。削除=死のパターンか。
友達から返信が来る。
「そうそう。まもるくんの元ネタ……『ソーシャルデスダンス』の作者さんが、こんなスタンプ出した覚えないし、許可した覚えもないって言ったらしくてさ。違法になっちゃったわけ。で、その対処として、このスタンプが削除されるってわけ」
「えっ、じゃあこのまもるくんスタンプはどうなるの?」
「削除。で、お詫びとして、コインが変換させるらしいよ」
「それならいっか」
よくないよ!
でも世間には抗えず……
これ、私が中学上がりたての頃にあった事件だ……『世に稀に見る著作権法違反』として取り沙汰されたやつだ。
……というわけで、私はこの世から削除されるのであった。




