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二十六回目

 きぃきぃ、と周りが五月蝿いので目を開けると、なんだか薄暗いのに、物の輪郭が明瞭に見えるという不思議な感覚に陥っていた。

 というか、周りにいるこいつらは、逆さまに天井に吊り下がる、鳥と呼んでいいのかよくわからないあの生き物ではないか。

「きぃきぃ!?」

 まあ、私も天井に引っ付いてるからそうだとは思ったけどね!? テンプレ回収お疲れさま。

 まともに暮らしていれば一生遭遇しないであろう生き物、蝙蝠である。その翼は羽根が幾重にも重なってできているのではなく、どちらかというと、両生類などに見られる水掻きに近い仕組みのように思える。実際、蝙蝠傘なんかがその通りだろう。

 そういえば、蝙蝠は超音波で会話する的なのを聞いたことがあるが……

『何いきなり大声出してんだよ、ワッパ』

 んえ? 私か?

『寝ぼけてんのか、ワッパ』

 この蝙蝠の名前がワッパというらしい。なんか馬鹿にされているような名前で気に食わない。

 というか、これ会話できるね。それとも便利な異世界機能なのかしら。まあ、異世界転生というだけで便利なところはあるからね。

『はははっ、ワッパは面白いなあ。これからがオレたちの時間だろうに』

 ということは夜か。把握した。

『そういや、パイセ、聞いたか? どんな生き物でもドラゴンになれるっていう人間の魔法の話』

 私も初耳なのだが。そんな世界観あったか。

『冗談にしちゃ出来がいい。人間さまに好かれて飼い慣らされれば、オレたち蝙蝠もこんな暗い洞窟で燻ってないで、偉大なるドラゴンさまみたいに威張れるってわけだ』

『人間さまのペットだけどな』

 ん、どんなモンスターでもドラゴンになれるっていう話はどこかで聞いたような気がする。どんな話だっけな。

『ワッパ、ドラゴンになりたいって言ってたろ? この洞窟から出ていくのか?』

 え、ワッパそんなこと言ったの? 向こう見ずだな。

『まあ、こんな洞窟で限られた人間しか来ないのを見て一生を過ごすよりは夢がある話だろ?』

『ガハハッ、夢見がちなワッパらしい』

 褒められているのか、貶されているのかよくわからないな。

 かくして、ワッパは洞窟を飛び出し、人間の世界へと冒険に行くのだった。

 いや、行動力ありすぎだろ、ワッパ。まあ、体は蝙蝠だから、特に身支度も必要ないのだが。

 朝になると、森に人間がやってきた。うん、逆さまで見ているから妙な絵面だ。

「あ、蝙蝠がいる」

 偵察値でも高いのか、数十メートル先でそんな声を上げるパーティの一人。え?

「あんな雑魚モンスターでは話にならない。実験のためにはもっと強力なモンスターが必要だ」

 冷静沈着を絵にしたようなやつが言う。

 その二人の間から飛び出してきた童顔が、好奇心に目をきらきらさせて言う。

「じゃあじゃあ、狩っていい?」

 え、まさか「hunt」じゃないですよね? 「keep」ですよね?

 ……と思ったら、弓矢で打ち落とされた。

「あはは、キミ、蝙蝠ごときがドラゴンになれると思った? ドラゴンは神様の次に強いんだから、人間でさえ人工ドラゴンは作れないんだよ? 一つ賢くなったね。もう無駄だけど」

 童顔にっこにこブラックジョークを聞いて終わった。

 これは「栄光のドラゴニア」という作品で、本編はこれのおそらくずっと未来の話。様々なモンスターをテイムしてドラゴン化させていく育成ファンタジーの話だ。まだドラゴン化技術が発達していなかった頃の「身の程知らずの蝙蝠」の話は後の世で教科書に載る笑い話である。

 もっとまともな転生先はなかったのか……

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