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二十五回目

 ふわっとした芳しい香りが鼻を擽る。心地よい目覚めだ。まあ、ここのところ不穏な目覚め方しかしてなかったからな。

「アコラ、起きて」

「うう、あと五分……」

「店開ける時間だよ」

 店とは?

 とりあえず起きると、そこには見たことのあるキャラクターがいた。……まあ、今まで見たことないキャラがいたことはないのだが……そこにいたのは、一時期流行ったスローライフゲーム「パンは世界を救う」の主人公キラであった。

 なるほど、この芳ばしい香りはパンの焼ける匂いだったのか。で、私はキラの兄弟弟子、アコラに転生した、と。

 パンせかはパンを作って街の人に配るという超スローライフゲームなのだが、ちょっとしたRPG要素として、パンを剣のようにして戦うことができる。ちょっと何を言っているかわからない、という方も一度は試してみよう。ここはパン屋で、パンが武器になる世界である。つまり、鍜治屋に行って剣を打ってもらったり、武器屋で調達する必要がないのだ。自分で好みの武器を作ることができる。しかも、気に入らない武器が完成したら、食べて処分ができるのだ。自然に優しいと思わないか?

 無駄のないスローライフRPG。私は好きだったのだが、「パンで戦う」というコンセプトが斬新すぎていまいち伸びなかった作品である。

 ただ、キャラデザはいいので、グッズは売れた。私はアコラとキラのキーホルダーを並べて満足していたことがある。

 で、ここはパン工房エペである。キラとアコラはみなしごで、エペの店主マーラにここに置いてもらっている。タダ働きは言語道断ということで、パン屋の仕事を手伝っているのだ。

 わあ、やっとのんびり生活できそうな世界観だよ。いえーい。

 エプロンをつけて、パン釜に向かうと、キラは焼きたてのパンを籠に入れ、日課の宅配に行くようだ。

「じゃあアコラ、店番よろしくね」

「マーラさんは?」

「酒場のユラギさんに呼ばれて出てるよ」

「そっか、いってらっしゃい」

 じゃあ、適当にパン作っておきますか。

 いやぁ、まさかパン作りができるなんてね。楽しい。

 夢中になってパンを作り、パン釜から取り出した焼きたてのほかほかをつまみ食いしようか悩んでいると……

 パァン!!

 銃声がした。それが胸を貫いた認識はなかったけれど、自分の体が傾ぐのを止められなかった。

 そうだ、アコラが一人のとき、この工房が狙われるの、すっかり忘れていた。でもまさかの銃殺ですか。理不尽……

 パン食べたかったな……

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