二十三回目
飛び交う薬莢、燻るような臭いと共に広がるのは錆び臭い血。
起きたらいきなり血塗れの瀕死だったんですけどね! こういうのやめてくれないかな!?
これは状況がこれだったもんで、でもなんかこの転生に慣れてきた冷静な私が、たぶんこれ抗争だよな、と理解していた。
胸元には拳銃、体に仕込まれた幾つものナイフ。うん、これは……暗殺者かな。あとはマフィア。
マフィアというと思いつく作品は二つほどあるのだが、私は手首につけている赤いスカーフである作品だと断定した。
その名も「イレブンズレッド」。十一の赤をモチーフにした組織名のマフィアが、突如現れた「青」を名乗るマフィアと抗争を繰り広げるハードボイルドアクションアニメだ。原作は漫画で、青年誌に連載されていたが、これがまた中二心を擽る作品で、思ったより低年齢層にうけた。
で、私が転生したのは誰かというと、服装はみんな似たり寄ったりなので、この赤いスカーフで判断するしかない。組織ごとにつける位置やスカーフの色の濃さなどが分かれており……先に言っておくと、私は中二ではないぞ。
手首につける、濃い赤はたぶん「緋の炎」である。緋の炎で瀕死になるキャラクターといえば、穏健派のナンバーツー、カルセだろう。
もう皆さんお察しのことと思うが、死ぬ。まあ、「イレブンズレッド」は死なないキャラの方が少ないので、どんなのに転生しても大抵死ぬのだが、まさか転生した途端に瀕死とは。
カルセは青のマフィアに襲われて逃げ延びたと考えられる。青のマフィアは赤のマフィアを制圧するため、協力体制を取ろうとする穏健派の構成員から潰しにかかろうとしているのだ。
こんなところでやられるわけにはいかない。だが、ストーリー上、死は確実。では私が取るべき行動は何か。
やはり、原作のカルセと同じく、仲間に他の赤のマフィアとの協力を呼びかけるしかない。そうでないとただの犬死にになる。
撹乱も兼ねて、細道を移動しながら、ここがどこかを確認する。緋の炎のアジトまでそう遠くない。
止血していないので、流血が止まらないのだが、どうせもう助からない。みんなを助けるためににアジトに戻らなくては。
銃で狙い撃ちしてくる連中と跳弾に気をつけながら、駆け抜けていく。
このままボスのクラクに会えれば勝ちなのだ。もう少し保てよ、この体。
転生して面白いのは、転生先の体が自分の元の体よりも動きがよかったりすること。アニメやゲームを見ながら、「こんな風に動けたらなあ」という夢を抱いていたのが実現する。ミリタリズムのときもそうで、レンくんの体で動くの超楽しかった。
危機的状況ではあるけれど、楽しんで損はないだろう。視界がふらつくが、カルセの体幹がしっかりしているので、真っ直ぐ走れる。マフィアすげえ。
アジトが見えてきた。あの中に入れば、攻撃は止むだろう。
中に入ると大勢が駆け寄ってきた。血塗れのカルセに悲鳴を上げるやつ、助けようとするやつ、様々いた。
そんな中、クラクが出てくる。クラクは赤のマフィアの中でも一目置かれている。抗争のときは血を求める残忍性があるが、考えは比較的穏健派に近い。だからカルセとも馬が合った。
「クラクさん……」
他の組織と青のマフィアを潰してください、と告げたところで、私の意識は遠退いた。
クラクが短く「ああ」と頷くのに対し、少し口角が上がったような気がした。




