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二十一回目

 はっと気がついたら体が重かった。部分的に重いとかそういうことではなく、全身にずしっと重石を乗せられているような……と服を見たら……

 きっ、着物!?

 十二単とまではいかないが、それなりに丈夫な布でしかもきらびやかなものが何枚も重ねて着せられている。十二単は重い重いと聞いていたが、まさかここまでとは。

「濃姫さま?」

「あ、お下がりなさい」

 濃姫? 濃姫って言ったら、織田信長の奥さんだよね。……ダイナマイトバディなのだが?

 それはさておき、私は戦国もののゲームはやって……あ、一つだけあった。戦国ものってアプリゲームだと延々と続ける面倒くさいやつだから、手をつけなかったんだけど、あれはノベルゲームで、本能寺の変で終わるからわかりやすくて……

 ……本能寺の変?

「死ぬじゃん」

 歴史ものは何がどうあれ必ず死ぬからな。あの徳川家康さえ死ぬのだ。

 そして、濃姫は信長と運命を共にする。つまり本能寺の変で死ぬ。焼け死ぬんだっけ? まあ、世界樹と羽根ペンで二回焼け死んでいるから、今更怖がるのもな……

 着物は整っているようだし、信長探すか。

 と、思ったら、廊下で宿敵と出会した。宿敵といっても、信長のだが。言わずもがな、明智光秀である。

 彼は私に礼を執ると、手を差し伸べてきた。

「濃姫さま。私と一緒に来ませんか?」

「どこにです?」

「どこへなりとも」

 はあ、顔はイケメンなのだが、こいつ裏切るからな。……もしくは、濃姫を手に入れたいがために本能寺を焼いたのでは? という説が、まことしやかに囁かれた時代があった。諸説あるが、なくはない理由なのかもしれない。一人の女を巡って戦、なんて馬鹿らしいと思うが。

 同時に、何人にも愛されたのなら、濃姫という存在が羨ましくもあった。私のかねてよりの望みだ。恋愛じゃなくていい。ただ誰かから愛されたなら、私はあんな絶望を知らずに済んだはずだ。……あるいは、単に私自身の弱さなのかもしれないが。

「あの方と共にあれば、あなたとも共にいることとなりましょう」

「……そう、ですか。そうですね」

 光秀は少し寂しそうにしたが、すぐにその表情を消した。冷静な辺りは女子受けしそうだな、と思った。まあ、濃姫はそんなことは思わないのだろうけれど、中身私だからね。考えるのは自由でしょ。

 さあて、心の準備をしますか。


 火が放たれ、多くの敵に囲まれる中で、私は信長の隣で薙刀を振るう。信長はもう、諦めていた。

「潮時だな」

「あら、潔いですこと」

 諸説あることだが、この作品「共にあらば」では濃姫がはねられた信長の首を抱き抱え、焼かれ尽くして朽ちたとされている。信長の首が見つかっていない今、これほど現実的ではない解釈も稀だが。

 愛する人の最後に立ち会えた彼女は幸せだったのだろうか。最後まで、一緒にいられて。

 少し泣いてもいいだろうか。




 お姉ちゃん……あなたは私を、愛していましたか?

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