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十六回目

「まもなく、列車が参ります」

 そのアナウンスで私の意識は覚醒した。というか立ったまま寝るってやべーな。

 今回は今までと違い、私が召喚先の人物になりきるわけではなく、召喚された先の意識が頭の中に残っている状態だ。

「頭痛い会社行きたくないくそ上司は見るだけで萎える先輩はアホ面晒して無茶振りしてくるし後輩は無垢なふりして私の悪口みんな仕事に行ったら帰らせてくれないいじめか何かなの私の机に当然のように書類山積みにして自分たちは飲み会でしょ私はそんな社交的な場に不適切な人材なのあああの書類今日までだもう少しで終わるけどどうせまたケチつけられるんだろうな元々あんたの仕事なんだからあんたがやれよつーか私のこと悪く言う割に仕事だけ寄越すのは何故意味わかんない」

 ……うおう、溜まってんな。句読点が一切ないような早口言葉が脳内に流れる。まごうことなき愚痴である。あれだ、異世界転生ものあるあるの主人公社畜パターンだ。

 ん? 嫌な予感が。

「会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない会社行きたくない」

「まもなく、列車が到着します。お待ちの方は白線の内側に……」

「……これ、一歩踏み出せば」

 ストーーーーーーップ!! やめろよ、一歩踏み出したら死ぬぞ!? 異世界転生するかもしれないけど一回死ぬぞ!? そして私は転生していきなり死ぬぞ!? こんな死に方は嫌あああああっ!!

 しかし、女性は一歩踏み出してしまった。体が言うことを聞かない。たぶん、意思というよりは本能なのだろう。

 会社に行くより、死んだ方がまし。それくらい追い詰められていたのだ。

 私を巻き込んではほしくなかったけどね!

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