十一回目
目を開けると空を灰色の雲が覆っていた。
今度は仰向けに寝ているっぽいので、願わくは人間であってほしいのだが、と起き上がる。
自分の体を確認しようとしたのだが……
「……見えない」
目が悪いとかそういうレベルの問題ではなく、純粋に見えないのだ。つまり、透明になっている。自分の足があるであろう場所にはコンクリートの地面がただあるだけ。手を持ち上げてみても、手は見えない。手のある位置の空間が歪んだりとか滲んだりとかもない。
透明人間になった。そうとしか言い様がない。一応、自分の体は見えないが、触れるらしく、なんとなく人間っぽい輪郭をしているので人間なのだろう、と推察する。
手近にビルがあり、そのガラス張りのところを確認してみたが、姿が映ることはない。吸血鬼とか、幽霊とか、そういう物の怪の類になったわけではないらしい。いや、透明人間も充分物の怪か?
透明人間……これだけでは情報量が少ない。ただ、誰かに聞こうにも誰も見当たらない。
これだけ建物がありながら、人っ子一人見当たらないというのは異様だ。一体ここはどういう世界なんだ? そう思ったとき、何かとぶつかった。
その瞬間、私の体が色づいた。ぶつかってきた人も瞬く間に現れる。
自分の容姿などに気を配っている暇はなかった。何故なら、その人物がぶかぶかのパーカーの袖からサバイバルナイフを取り出し、襲いかかってきたからだ。それだけでこれが何の世界観なのか理解した。
これは新感覚アクションゲーム「カクレテイルヨ」の世界観である。バベルの塔の一件で神から怒りを買った人間は、全員透明人間にされてしまう。更に、人間同士がぶつかった場合、どちらか片方を瀕死まで追い込まないと死んでしまうという瞬発力の問われる鬼畜ゲーム世界観である。
ミリタリズムのときに言った通り、私はアクションゲームが苦手で、このゲームではかなり苦戦を強いられ、よくよくゲームオーバーになっていた。
ただ、助かる方法がないわけではない。アイテムとしてその辺に転がっている小瓶の中身を飲むと、透明に戻れたりする。ちなみに、中身は毒薬だったり、増強剤だったり、小さくなる薬だったりと様々なので、半ば運ゲーである。
と言った側から小瓶発見! 飲むか?
相手は数多のナイフを装備でき、俊敏の高いキャラクターだ。ドルンだっけか。私のキャラは一撃必殺系のアルナ。ただ、アルナ最大の欠点は武器がないと戦えないことである。して、手持ちに武器はない。
となれば、俊敏ではドルンに絶対勝てないので、小瓶に賭けよう。
小瓶を一気に煽る。特に味はしない、普通の水だ。
意識が闇にすとんと落ちる。死んだっぽくはない。ということは毒薬ではなかったということだが……睡眠薬ですね。
敵の前で眠りこけるのは即死と同義だよ!!
暗い中で「GAMEOVER」の赤い文字を意識の隅に捉えたような気がした。




