一回目
私は世界に絶望しながら生きてきた。
学校では病弱だからといじめられた。よく保健室に行くのだが、保健室から帰ってくると、机に花が生けてあったり、机がそもそもなくなっていたり。被害は机だけじゃない。ひどいときは鞄も盗まれて、ごみ箱に捨てられていることもあった。ご丁寧にごみ箱の中にあっただろうゴミクズと教科書を入れ替えて。
当然、教科書もズタズタにされており、買い替えが続いた。嵩んでいく出費に、親はいい顔をしなかった。
いじめられているのだ。学校に行くのが辛いんだ。そう親に打ち明けたけれど、そのとき何と言われたか。
「中学生にもなって、親を頼るんじゃありません。自分でなんとかしなさい」
……だってさ。
正直、「はあ?」って思ったよ。自分でどうにかできるなら、親に相談なんてするわけないでしょ。何を言っているんだ、この人たちは、と思った。
そんな私を元気づけてくれたのは、唯一、姉だけだった。
「なつみ、今日も何かあったのー? そんな暗い顔してたら幸せ来ないわよー。ほら、お姉ちゃんなつみの好きながちがちファンタジー見つけたから読もう! ネット小説なんだ」
お姉ちゃんは自分の好きなジャンルを最初は紹介していたけれど、だんだん私の好みに合わせてくれるようになった。
私は選り好みするタイプでもないので、お姉ちゃんが好きな作品も楽しく読んだ。ゲームなんかもプレイして、お姉ちゃんといる間だけは楽しく過ごしていた。
──あの日までは。
屋上は風が心地よく、とても綺麗な空が見えた。まあ、クラスの不良から呼び出されたのでいい予感はあまりしなかったのだけれど、こんな素敵な場所なら、もっと早くに知っておくんだった。
「おう、ちゃんと来たじゃん」
現れたのは、姉と同じ学年の先輩だ。何故呼び出されたかはてんで見当がつかないのだが、まあ、校内最強の不良としてその名を轟かせているのは私も知っていた。
「本当お前、馬鹿だよな」
「……会っていきなり後輩を罵るのはどうかと思うんですが」
「だってそうじゃん」
下卑た笑みを浮かべて不良が言う。
「お前がなんでいじめられるか、考えたことあるか?」
「……? いじめやすいからじゃないですか?」
私が疑問符を浮かべながら出した答えに、先輩は大笑いした。それは嘲りがほとんどだったと思う。
分析する余裕は、続いた言葉によって吹き飛んだ。
「お前、本当にいい妹だなぁ。そりゃ、いいお姉ちゃんを演じるためにいじめさせる甲斐があるってもんだ」
「……え?」
いいお姉ちゃんを……演じる?
まさか。
「全部お前の姉のはるかが仕組んだことなんだよ。お姉ちゃんの綺麗な部分しか知らない妹ちゃんは知らなかったのかなぁ? はるかさんは『闇の番長』と恐れられているんだぜ?」
「そんな……」
そんなそんなそんな!
お姉ちゃんが、私のお姉ちゃんは……
「今日はオレが好き放題していいって許可が出たからなぁ……たっぷり味わわせてくれよ? お前の極上の絶望顔を」
そうして、私は殴られて、吹き飛ばされた先のフェンスが壊れて、まっ逆さまに落っこちた。
私は最後まで、絶望しながら生きていた。