サブタイって何?
オークの糸通し。
「って、なに?」
「おっと、アカリも色々な事が気になるお年頃かな?」
「むかつく」
「分かった。謝るからそのナイフを下ろすんだ」
「意味教えて」
「あー、オークってのはごりごりマッチョってイメージがあるだろ?」
「うん。牙と」
「そうそう。んで、あの見た目からして裁縫用の針に細い糸を通すことは出来ないと思うわけだ」
「偏見だ」
「そうだな。偏見だったちゃんとオークに謝るからそのナイフを下ろしてくれ」
「仕方ない」
「フラッシュバックと冷や汗が止まらないよ」
「よくわかんない」
「よし、まぁ仮定として、実際には得意かもしれないけどあくまでも仮定として手先の細かい作業が苦手だとしよう」
「うん」
「そんなぶきっちょなオークが一生懸命出来もしない事をやっている姿は滑稽だと、そう思うわけだ」
「うん」
「そんなオークと台所で包丁奮うアカリが重なって見えたからオッケーもう言わないから喉元に当てたナイフを下ろしてくれ」
「頑張るもん」
「よし、アカリの意気込みとヤル気は伝わったからナイフを持った手に入れた力を抜いてくれ」
謎の儀式。
「いただきます」
「・・・いつもやってるけど、その儀式はなんなの?」
「大地の恵みとお魚さん、そしてお肉さんにありがとうを伝える」
「どこで覚えたんだ・・・」
「ずっと前に教えてもらった」
「村長か?」
「違う」
「父さ・・・と母さんはやって無いよな」
「・・・友達」
「誰だ・・・?」
「今はいない」
「そっか、何かごめん」
「いい。またすぐ会えるから」
「そうだな。生きてればきっとまた会えるもんな。成長して元気に暮らしてるアカリの姿をその子に見せてやろうぜ!」
「きもい」
「そこは元気付けてくれてありがとう、でしょ?」
ワンコ。
「今度こそは絶対喋った」
「また?」
「時間が経って分かった。絶対アイツ喋った」
「・・・」
「本当だって!」
「おばさんがいってたよ」
「母さんが?なにを?」
「君は産まれたときからモリレの毒に侵されてたって」
「エグい真実」
「アカリちゃんだけは優しくしてあげてねって」
「守られていない約束」
「優しくしてるもん」
「十七行前の言葉を忘れたのかな?」
「私は過去を振り返らない」
「やだ、かっこいい」
「繰り返すけど」
「それはダメだよアカリちゃん」
終わり。