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「コナン君が居なければ殺人事件は起きないし。」
鬼の首を取ったかのように彼は言う。
顔にニヤニヤとした笑みを貼り付け、得意気である。
面白いことを言った顔をし、面白いことを言った雰囲気を出している。
彼の周囲には俺しかいない。
つまり、彼は俺に対して発信している。
俺は今、腹が立っている。
彼の発言に対して腹が立っている。
一体何故これほどまでに腹が立つのか。
面白くないからというのは違うような気がする。
面白さとは人それぞれ違うものだし、おそらく彼が意図するような内容のことを発言して、笑いをかっさらった人もいるはずだ。
そう、世間的には面白いと思う人と思わない人の割合は半々程度ではないだろうか。
彼が過剰に面白いだろうという雰囲気を出すのが、腹に据えかねるのだろうか。
彼の醸し出す面白さと、発言内容の面白さが食い違っているのか。
面白いことはさらりと言った方が良いというのが俺の持論だ。
しかし、面白い雰囲気を過剰に押し付けてきても、きちんと成立している人も居る。
そして、彼の人物像と面白さは釣り合っている気がする。
上記の発言を彼はいかにも言いそうであり、好みそうである。
彼のあまりの彼っぷりに腹が立つのだろうか。
こういうことを考え出すと、俺の思考は自分を鑑みすぎる方向に進んでいく。
他人のことを考えるとき、比較対照として自分を持ち出すのは悪い癖である。
そんなもの、誰でも自分の方がかわいいに決まっている。
そして、発言しないことは考えていないことと同じだ
俺は食べかけのカレーをスプーンに掬いながら、対面に座る彼に向かって笑いながら口を開く。
「確かにな!」