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天の使い  作者: かー
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もう1人の合格者

 昇任試験に無事合格した3人は昇任式会場に到着した。


 3人が昇任式が始まるのを待っていると、遠くから下級使者たちの会話が聞こえてきた。


「今年の昇任試験は4人も合格者出たらしいぜ」

「まじ? 今年は優秀なやつら多かったんだなぁ」

「しかも、初戦から決勝まで全部擬態使って勝った奴もいたらしいからな。まぁ、真逆のやつもいたらしいけど」

「訓練生でそれかよ。俺らも抜かれないように頑張らなきゃ」


 会話を聞いていたミケルは優秀という言葉にだけ反応し1人浸っていた。


「合格者って私達だけじゃなかったんですね。しかも、毎試合擬態使ってるって言ってましたよ」

「どんな奴か楽しみだな」


 ルーシェとセレスが話をしていると、間を割って1人の男が話しかけてきた。


「それ俺だよ。お前らかぁ、仲良く3人で合格したっていう奴らは」

「仲良く3人で合格して何が悪いのよ」

「俺が言いたいのは、悪魔を前にして死地に陥った時も仲間のこと考えてられんのかってこと。結局は全員、自分が大好きなんだよ」


 優秀という言葉に浸っていたミケルだったが、男の発言を聞いた途端、反論した。


「そんなことない! 助けを求めてる人がいたら助ける!」

「そんな綺麗事じゃ使者は勤まんねーよ」

「例えそれが君でも僕は助けに行くよ」

「本番直前まで擬態も使えなかったっていうお前がか? お前に助けられるほどやわじゃねーんだよ」

「なんだと!」

「やめとけ、ミケル。こんなやつに構ってても仕方ない。昇任式も始まるし行こう」


 他とは違い重苦しい空気の中、昇任式が始まった。


 昇任式には、原則全ての使者が参加し、これから共に戦う仲間を祝福する。


 新人使者の名前が1人ずつ呼ばれ登壇し、()()の代理として上級使者の1人であるセラフィからお言葉を頂戴する。


「がんばってね! 新人くん、新人ちゃん!」

「はい!」


 こうして昇任式は無事終了した。


 昇任式が終わると、4人は再び集められ初任務の指令を受ける。


『天の使い』が行う任務とは、周辺情報を元に割り出した悪魔の出現エリアが記入されている任務票に従い、該当の悪魔を狩ることである。


「こんにちは、僕の名前はラマエラ。下級使者や上級使者の一部の監督を任されています。みんな仲良くしてね。

 で、まず最初に『天の使い』には階級があって、一般に上級使者と呼ばれる「熾天使」「智天使」「座天使」

 その次に下級使者と呼ばれる「主天使」「力天使」「能天使」の6つに分かれているんだ。君たちは今一番下の「能天使」ってとこ」

「ほぅ、ラマエラさんはどこなんですか?」

「僕は、一応1番上の「熾天使」やらせてもらってます」

「おぉ、すげぇ」

「さらに「熾天使」を含む全ての使者の上に立つのが『天帝』と呼ばれるお方だよ」

「あ、あの休んでた人ですよね?」

「休んでたっていうか天帝はみんなに姿を見せないお方だからね…それはさておき! みんなを集めたのは、何を隠そう初仕事を任せたいからです! 普通任務はバディを組んで2人で行ってもらうんだけど、今回は初めてだから4人で行ってもらいます。じゃ、ミケルくん、ルーシェくん、セレスさん、ヘッセくん、がんばって!」


 そう言って渡された任務票の地図を頼りに4人はサリバンから少し北に行ったところにあるコプス村を目指した。


 コプス村に向かう道中、ミケルは少しでも仲良くなろうとヘッセに喋りかけた。


「名前ヘッセって言うんだね、よろしくね」

「お前らと仲良しごっこする気はない。いいか、お前らはじっとしてるだけでいい。悪魔は俺が殺る」

「まだ悪魔がどんなのかもわかってないのに1人で行くのは危険だよ」

「ミケルさん、いいですよ。好きにさせましょ」


 ルーシェとセレスはヘッセに対して完全に嫌悪感を抱いていた。


 しかし、ミケルだけは諦めずにその後も何度も話しかけたが、ヘッセは無視し続けた。


 しばらくして、4人がコプス村に到着するとミケルとルーシェはネイカ村の時と同じような霊感を感じ嫌な予感がした。


 村人の面影はなく静まり返っている。ミケルは慌てて一軒の民家の扉を開けた。


 部屋の状態はお婆さんが殺された時と同じように荒らされていて、そこには脱け殻のようになった村人たちが倒れていた。


 悪魔は人間の魂を食らう。


 悪魔が何故人間の魂を食べるのかは不明であるが、一説によると寿命を延ばすためと言われている。


 殺してから魂を食べることもあれば、殺さずに魂だけを食べる場合もある。


 その場合、魂を抜かれた人間は仮死状態となり、一切の感情を持たない脱け殻になる。


 さらに、一度脱け殻となった人間は元に戻すことはできない。


「完全に全部終わったあとだ。見つけ出して絶対殺す」


 そう言って、ヘッセは部屋を出て去って行った。


 コプス村の村人は半数以上が魂を食べられ脱け殻となり、残りの村人は無残な死体となって放置されていた。


 その後、ミケル、ルーシェ、セレスの3人は死体となって放置されていた村人たちを1人ずつ埋葬した。


 一方その頃、ヘッセは僅かな痕跡を辿り悪魔の元へと向かっていた。


(あんな量の痕跡残しやがってバレバレなんだよ、クソ悪魔)


 しばらく歩いていると先の方で悪魔が、ヘッセが来るのを待っていたかのように座っていた。


「あら、1人ですか。いつもは2人で来るんですけどねぇ。まぁ、若い子だし良しとしましょうか」


 それは、コプス村を壊滅させたであろう悪魔だった。


 異様な空気を放っている悪魔にヘッセは思わず身構えた。


 遂にヘッセの初任務が始まる。



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