プロローグ 深夜2
とある和室で、二人の男が向かい合って、なにか話し合っていた。
「正気か、親父?」
「当たり前だろ。」
「あんたに、カエデの誇りはないのか!!?」
「・・もう、そんなものを持っているのはお前だけだ。」
その言葉を聞き、息子であろう男は一瞬泣きそうになる。が、すぐに立ち上がり、
「そうかい、分かったよ。今日かぎりで俺はここを出る!!お前らにはもう愛想が尽きた!!」
「・・追っ手は出すぞ。」
「勝手にしろよ、てめぇらみたいな腰抜けには捕まらないがな!!」
おかしい。最近の兄様はおかしい。
あんなにも優しかった兄様が、こんな暴政を、仕切るなんて
民は苦しんでいる。でも、誰も逆らえない。あの絶対的な力を持つ兄様には。でも、
「私がやらなければ。」
でも、私だけでは到底無理だ。同志を集めなければ、あの剣を持つ兄様を倒せる力をもつ同志を。
黒が、闇が支配する、地下深くの空間で、
「本当にやるのですか、父上。」
「当たり前だ!!この儀式が成功すれば、闇にとざされた我らジェイド一族は自由という名の光を手に入れられる!!」
「たくさんの命を犠牲にしてでもですか!!?」
「なにを言っておる、奴等は我らにこの役目を押し付け、今までのうのうと生きてきたのだぞ。それはこの罰だ!!!」
「ですが・・「もうよい!!おい、お前。ダークを下がらせよ!!」父上!!父上は間違っています!!今すぐ考え直してください!!」
引きずられていきながらも彼は叫ぶ。届かないと分かっていながらも。
昔から、魔法も剣のウデも村の中では一番だった。
そんな、俺は騎士に憧れていた。それは今でもだ。なぜかは分からない。ただ、カッコよさそうとか、そんな理由ではなかったと思う。
あぁ、思いだした。あの子に出会ったからだ。なにが合ったかは今も分からない、ただあの時、死んだような目をしたあの子を見て、この子の笑顔を見たいと、この子を守る騎士になりたいと、俺は思った。
今になって思うと、一つ目は分かるが、だがなぜ、二つ目も思ったのだろうか?
あ、ついでにいま、俺はあの子を守る騎士かって言うと、どっちかつうと、バカ兄だ。
まぁ、でも今あの子は笑顔だ。だから俺はこれからもあの子を守る騎士であろう。
窓一つなく、天井のランプだけがへやを照らしている。そこに一人の少女と初老の男がいた。ただし少女の方は、手足を縛られている状態だが。
苦しい。痛い。もう止めて、
「もうやだ、止めてよ、お爺ちゃん。」
「どうした、まだ、あと三つ残っておるぞ?」
そして男が何か呪文を唱えたあと、黄色い水晶をとりだして、それを少女の腹に押し付ける。すると、水晶は少女の中へ、だんだんと吸い込まれていった。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
少女の叫びとともに、
もう、嫌だ。
太陽はまだ昇っていない。