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サヨナラ世界  作者: こぶた
6/19

6・仁村アサミの場合

ーーー「幸せ」はなんて残酷なんだろう。





人生は±0なんて言う人は決まってプラス側の人間で、不幸のどん底にいる時に同じ台詞を言える人なんていない。






私の両親は私の目の前で死んだ。





小さい頃、私は活発で両親と出かけるのをいつも楽しみにしていた。




いつでも優しいお母さん。



少し厳しいけどいつも私とお母さんを愛してくれていたお父さん。




私はそんな両親と一緒にいられて幸せだった。





……ずっとこの幸せは続くと思っていた。





その日は出かける予定はなかったけれど、私は海に行きたいとわがままを言った。

困りながらも両親は私のわがままに付き合ってくれた。




私は今でもこの日の私を許せない。






海までの道中で、私たちの乗った車は逆走する大型トラックと正面衝突の大事故を起こした。




両親は見る影もなく潰されて死んだ。






………不幸なことに私だけは生き残った。






私が海に行きたいなんてわがままを言わなければ両親は死ななかった。




お父さん、お母さんは私が殺した。







ーーーあぁ、「幸せ」はなんて脆いんだろう。





こんなに不幸になるなら幸せなんて知りたくなかった。幸せになんてなりたくなかった。




一度幸せの味を知ってしまったら、不幸になるのはあまりにも辛いことだった。






きっと、私の一番の不幸は「幸せ」を知ってしまったことだろう。





だから私は幸せを憎んだ。嫌った。何よりも幸せが怖くなった。






両親の死からしばらくして、私は施設に預けられることになった。




他人に対して距離を置き、壁を作った。誰も信用せずに生きて行くことを決めたから。





私はそうやって学生時代を過ごした。

何も楽しいことなんてなかったけれど、これ以上不幸になることもなかった。




私は大学を卒業して、施設を出た。ずっと世話をしてくれて大学まで出させてくれたことはありがたかったけれど、特になんの思い入れもなかった。





やっと、一人で生きていける…。

これまで通りに、これ以上不幸にならずに、幸せにならずに、そうやって生きていこう。





そう思っていたのに。





彼は突然私の前に現れた。一目見て私を好きになったと言った。




……私を幸せにしたいと言った。






私はそんな彼を無視し続けた。彼はそんな私の抵抗を無視した。




彼はズカズカと私の心に入ってきた。私の壁を壊してしまった。そして彼は私の心に寄り添ってきた。





そんな彼と一緒にいることで、私は大嫌いな「幸せ」になってしまった。






わからなくなった。



私は幸せになりたかった?不幸でいたくなかった?

私は幸せになりたくなかった?不幸でいたかった?






ひとつだけ、わかることがある。



「幸せ」は続かないこと。






「幸せ」になった私はもう二度と不幸になりたくなかった。幸せのままでいたかった。






だから「死にたい」と言った。


そうすればもう不幸にならなくていい。幸せなままでいられると思った。

サヨナラ世界:不幸な少女

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