第六話
あらすじ
扉開いたよ!それだけ!
次の空間は生活空間!やったぁ!
とりあえず詳しい説明を受けたよ!分かんねぇ!
行先不安だけど、私は元気です(白目
ひとまずこの空間に対して調査してみる。
まずはテント。
四つあるがどれも大きさは同じ。中も特に変わったところは無い。
まるで間違い探しでもしているかのようだ。
中央に大きな丸いテーブル、いすがあり、それを囲むようにしてタンスや
流し台、キッチン。あと仮設トイレ。ベッドまである。
タンスの中には服や下着なんかも入っている。確認するとき女性下着
まで見てしまったのは事故。そう、事故だ。
仮設トイレもこじんまりとしてはいるがそこそこ綺麗で、割と生活
しやすい環境だった。
拡声器越しにテストマンとも話をしてみるが、どうやら彼の方も
同じ状態らしい。なんにせよこの待遇はありがたい。
「どうも生活面で苦労することは無さそうだ」
『当たり前じゃろ。お主のようなニート、不便な生活を送らせただけで
衰弱死してしまうじゃろうて』
少しムッとした顔を見せるが、言い返せないのですぐに止めた。
次に壁伝いに空間の端を見て回る。
四方の壁の中央にはそれぞれ、先程通ってきた扉と同じような金属製の
扉が一つずつ。
一つは何も描いてない無地の扉。ここは僕が入ってきたところだ。
向かって右側の扉は霧が渦巻く空間の中で倒れている人の絵。
左側は銃を持った人間同士が戦っている絵。
最後に後ろ、入ってきた時正面に見えた扉は牛の頭をした人間の絵が
描かれている。
どの扉も両開きで、かなり大きい。高さも3mほどあるだろう。
しかも城門のように固く、叩いた感触としてはかなり厚い。
「これ...開けられるのか?」
押したり引いたりしてみるが、僕の筋力では到底開けられそうにない。
というか筋骨隆々の大男が全力を賭してようやく開けられそうな扉だ。
煉は僕が開けようとしている様を静観していたが、ふいに口を開く。
『この扉、何か術のようなもので封じられておるな』
煉は扉に触れて、何かを感じ取るように目を閉じる。
「前にも思ったんだけど...煉はその、能力者的なものなの?」
僕は疑問に思ったことを聞いた。いや、このことは前々から疑問に
思っていた。
煉があの神社の前から僕をこの世界に戻したこともそうだったし、
煉と初めて会い、ここに帰ってくる時、煉は神通力がどうたらとも
言っていたからだ。
『神通力の類や憑依の類はワシにもよう分からん。というか知らん。
まぁ多分長生きしとるからじゃろうて』
いや、そんな能力、数十年の歳を重ねたところで体得できるような
代物じゃないだろ...
『そんなことよりこの扉、やはり神通力で塞がれとるようじゃ』
煉は扉から手を放す。するとすぐに上の方から器械音声が喋り出した。
「その扉はロックされています。通過権限を持つ担当者、若しくは
通過資格を持つ被験者の通過コードを登録して下さい」
よく分からないが、どうやら今は通れないらしい。
「ルール、扉に触ったのか?」
テストマンだ。拡声器が器械音声の音を通していたらしい。
「ああ、触ったよ。権限がどうとかって」
「俺も触った時同じことが起こった。権限というのは管理者、つまり
器械音声側の人間の事なんだろう。俺達は被験者側、つまり通過資格
が無いとその扉は開かないんだと思う」
テストマンは淡々とそう言った。この状況でこの洞察力。冷静になれば、
テストマンは聡明な男なのだろう。
「なるほど...」
つまり誰かここを通れるような人物を連れてこなければいけない。
それは同時に、自分たちの他に誰か被験者がいるという事も暗示していた。
しかし、他の扉を見て回っても、全て同じような結果。最初の入り口以外
に開く扉は無かった。
「ダメだ...どれも開く気配は無いな...」
僕がそう嘆いた時、煉がある一か所を指さす。
『まだ、もう一つあるじゃろうて』
煉が指を差すその場所、そこだけはまだ確かめていない。
最後に見た、入ってきた時正面に見えた扉は牛の頭をした人間の絵が
描かれていた扉だ。僕はそこだけは近寄りたくなかった。
何故なら、その扉だけ中から奇妙なうめき声が聞こえていたからだ。