第四話
あらすじ
また白いとこに来たよ!白いね!(適当
扉に気を取られてたら声が!誰だろう!
声のする方へ行ってみよう!いえーい!
あれれ~?おっかしいぃなぁぁ(名探偵コ●ン風
拡声器しかないやぁ!
....え?これ?
『なんじゃ?これ』
煉は初めて見る拡声器をさも珍しそうにまじまじと見つめる。その時、拡声器から
声が聞こえた。
「...誰かいるのか?」
『ひッ!?』
拡声器から響くまるでラジオのように砂嵐音の混じった声。間違いない、
誰かが拡声器から僕に声を掛けていた。
「ああ、ここにいるぞ!」
拡声器から響く声に驚いて尻もちをついた煉をよそに、僕は拡声器の声に呼応する。
「そうか、ここには俺の他にも人がいたのか...良かった...」
男の声は安堵したように溜息をつく。どうやらこの男も初めて他人と接触したらしい。
が、すぐにその声はしっかりとした声に変わる。
「俺はT-30-122だ。君は?」
男は自らをT-30-122と名乗った。いや、Tなんちゃらってどういう事だよ。
それでもまぁ名乗られたからには僕も名乗らないとな、と思い名前を口に
出そうとする。
「僕は.........」
...名前が出てこない。前世の記憶ははっきりと残っているのに自身の名前
の記憶だけがすっぽりと抜け落ちている。どれだけ思い出そうとしても
思い出せない。
「僕は...」
『適当に答えれば好かろうて』
半ば面倒くさそうに煉は言った。どうやら煉には僕の心が分かるらしい。
「僕は....R-18-122だ」
とっさに思い付いた単語(数字?)を並べて後悔した。とんだ大失態だ。
煉ならば意味は分からないだろうが、この人はどうだろうか。
「...ではR-18-122。イニシャルを取ってルール君と呼ばせてもらう。
俺の事はテストマンとでも呼んでくれ」
意味を分かっていないにしてもナイスカバー。これから僕はルールだ。
「分かった、テストマンさん。それで、あなたは今何処にいるんですか?」
「俺も分からん...気付いたら白い部屋で寝ていて、無線機がそばに落ちて
いた。」
状況としては僕と大して変わらない。だが先程僕がこの部屋を見回した時には
彼のような人影は見当たらなかった。同じような部屋が他にもあるのだろうか。
その時、白い部屋にスピーカーの音が響く。
ピ、ピ、ピ、ピ.....
「生存、確認。
名称、錬転魂番号34。
体調、良好。
これより、ナビを起動します。」
器械音声特有の女性の声で、そんな文章が読まれる。もしかして、これ、
俺の事か?
「なんなんだこれは...」
テストマンが呟く。どうやら彼の空間でも同じような音声が聞こえている
らしい。
器械音声が聞こえてから数秒後、今度は男性の器械音声が聞こえてきた。
「初めまして、34番。これからあなたに対して行う選別をお教えします」
器械音声は淡々と喋る。
「あなたは、転生のシステム下で何らかの理由でエラーを起こしました。
従って、あなたを転生することは出来ませんでした。
なので、あなたには我々の権限を持って、転生するための試験を用意
しました。この試験に挑んでください。
あなたは現在、元の世界の肉体を持った状態での生存となっています。
この状態の維持が出来なくなった段階であなたは転生が完全に不可能と
なります。
転生出来る資格を取得した場合、あなたが適合した世界に自動転生する
形となります。それではどうぞご武運を。」
音声はそこで終わった。
転生でエラーって...そんなことあるのかよ....試練とか.....
しかも肉体持った状態で生存ってことは、もしこの状態で死んだらその
段階で俺の命は終わりってことか!?
「どういうことだよ....」
テストマンの震える声が拡声器から漏れていた。テストマンもこの状況が
恐ろしくマズいものだという事を理解したのだろう。
そんな不安をよそに、煉は無邪気にも
『これ、お主!これはチャンスじゃぞ!?転生できるなんて、ワシが
したくても出来んかった事じゃ!こんなチャンスほっとくなんて
このワシが許さんぞ!!」
などと言っている。
とんでもなく意気揚々。こいつ一回死んだら終わりってこと理解出来て
無いんじゃないか?
まぁどちらにせよ生き返るにはこの道しか無いらしいし、こんな何も無い
ところでじっとしていても何も始まらないだろう。
こちらの世界に来てテンションの上がっている煉の言いなりになるのは
どこか癪なのだが。
「....ルール、お前はどうするんだ?」
ふいに拡声器からテストマンが話しかけてくる。
「僕は行くよ。ここにいても仕方がないし」
「同感だ。俺も行くとしよう。...気を付けてな」
「お互いにな」
僕は金属製の扉を見る。
模様はどうやら丸い焚火を人間が囲っている絵のように見えた。
それ以外は何の変哲もない鉄製の扉なのだろうが、この状況において
はとても禍々しいものに見えて仕方がない。
僕は拡声器を右手に携え、この金属製の扉に手を掛けるのだった。