第十二話
あらすじ
ようやく戦闘!巨人怖ぇ(笑
煉は主人公足動かねぇから麻酔掛けたよ!などと供述しており...
そんなこんなで最後は超跳躍(適当
「.....は?」
巨人が石柱を振り下ろす頃には、僕の体は巨人を飛び越えていた。
ゆうに5mは超えた跳躍だっただろう。
「.....!!!」
僕は咄嗟に着地の衝撃に備える。だが、僕の体はスタッ、と軽い音と共に地面に着地した。
「.......どうなってるんだ....」
5mを超える跳躍にも関わらず、足は折れていないどころか、痛みさえ感じない。
先程まで感じていた気持ち悪さや倦怠感はすっかり消えている。むしろ、どこか
快楽のような感覚が僕を包んでいた。
【レベルアップ:レベル2...麻酔効果に新たな効果を付与。
麻酔発現時に発生する負担の軽減、及び身体能力の上昇。
自身にダメージが入った際、それを麻痺させ、快感を増幅する。】
脳内音声が聞こえる。どうやら僕はレベルアップによって能力が強化されたようだ。
『あ、焦るのぉ。いきなり跳ぶもんじゃから、何が起こったのか分からんかったぞ。
何が起こっておるんじゃ?』
...どうやら煉にはさっきの器械音声は聞こえていないらしい。
「...どうも能力がレベルアップしたらしいんだけど...」
僕は器械音声の内容を説明しようとする。
『それは後でよい、それより巨人じゃ!』
巨人は空振って地面にめり込んだ石柱を引っこ抜き、辺りをキョロキョロと見渡す。
どうやら僕を見失っているらしい。
『あ奴がお主を見失っておる今がチャンスじゃ!あ奴の不意を衝くぞ!』
巨人に気付かれないように、そばにいた死んだ兵士の死体から剣を拝借する。
僕には少し重い剣だが、振ることが出来ない程ではない。
「...よし」
巨人はまだ僕を見つけられていない。この巨人、知能はあまり高くないのだろう。
僕は剣を構え、ゆっくりと巨人の背後に立つ。そして
「おらぁぁ!!!」
僕は力いっぱい、巨人の膝の裏に剣を突き立てた。その割にそこまで深く刺さらない。
だがそれでいい。それを想定して、僕は膝の裏を刺したのだから。
「....ウォォォ!!!!!」
巨人はその場で大声を上げると、膝の痛みに耐えきれずその場に膝をつく。
その反動で剣は更に深く突き刺さった。
「ゥ....ウゥ.....ゥアア.....」
膝をついた体制で悶える巨人はこちらには目もくれずに泣き始めた。
...巨人にも理性はあるようだった。まるで普通の人間のように痛みで泣いている。
だが、麻酔効果で感覚を失っている僕にはその涙の意味は分からなかった。
無慈悲にも、膝をついている巨人の頭をもう一本拝借していた剣で突き刺す。
「ゥゥ...アアアアアアアアア!!!」
巨人は断末魔を上げ、地面に倒れ伏す。僕は倒れた巨人の頭を何度も刺した。
昔僕がやっていたゲームに、『頭を壊さなければ死なない敵』がいたからだ。
幸い剣は折れていない。僕はもう一度、力いっぱい剣を頭に突き立てた。
『お主、もうそ奴は死んでおるぞ。聞いておるのか?』
僕は剣をもう一度刺す。すると、僕の前に体力ゲージが見え始めた。
試しにもう一度刺してみる。体力ゲージは下がる。どうやら巨人はまだ死んでいない
らしい。僕は巨人が死ぬまで剣を刺す。もう一度、もう一度。
『お主!止めんか!!そ奴はもう死んでおる!!それ以上は死者への冒涜ぞ!!』
僕は剣を刺す。もう一度、もう一度。
「.......ふぅ」
巨人の体力が完全に無くなったあと、僕は巨人から剣を引き抜き次の巨人を倒そうと後ろを
振り返る。だが、そこに巨人の姿は無い。それどころか、兵士も、あの英雄の人もいない。
「あれ...?」
僕は辺りを見回す。そこは誰もいない、誰も存在しない空間であるかのように思える。
景色はそこに存在するが、僕にはそれが見えない。
不思議な感覚だった。それと同時に、僕の脳内は焦りに占領されていく。
ここはどこなのか。兵士たちや英雄はどこに行ったのか。ここにいるのは僕だけなのか。
巨人との戦闘は続いているのか。僕は何者なのか。ここはどこなのか。僕は誰なのか。
そういえば煉もいない。あいつはどこに行ったのか。
ここはどこ?僕は誰?戦闘は?兵士は?あの英雄は?煉は?
ここはどこぼくはだれせんとうはあのえいゆうはれんは?
ここハどこぼクはダれせんとうはあおえいううはれんわ?
...,..,,...,....
僕にはもう、僕が存在しているのかさえ、分からなかった。