表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第一話 

この物語はフィクションであり、実際の人物、及び実際の地名、状況とは関係ありません。


前世はニートだった。

ただ毎日寝て、食べて、そして寝る。その繰り返し。

そんな生活してたから、自分が死にかけてる自覚もなかったんだろう。


やけにあっさりと死んでしまった僕は今、

大仰な施設のように見える建物の前にいる。

まるで工場のような白い壁、中の見えない金属製の両開きの扉。

それ以外が暗闇に包まれた世界。

普通ならこんな状況で冷静になれるはずもないが、僕はようやく冷たい世間の目を

避けられた安心感からか、不思議と冷静な物見をしていた。

ああ、俺死んだんだな、って。


ふと周りを見渡してみるが、建物以外には建物はおろか人の影さえ見つからない。

建物に入るしかないという事だろう。

選択肢が限られているのなら仕方ない、と建物に入ろうと両開きの扉の片方に

手を掛けた時、突然建物からけたたましいサイレン音が鳴り響く。


「重大エラー発生!!重大エラー発生!!生存確認のエラーを確認!!

選別を開始します!!」


突然の大音量に僕は扉から手を離し、その手で両耳を塞いでうずくまる。

こんな大きな音、前の世界なら騒音被害で訴えられるぞ!などと思いながら、

耳を塞いでも聞こえるほどの音声とサイレンを聴いていた。

サイレンに混ざって足音が聞こえてきたころには、僕の意識は途切れていた。





眼が覚めると、僕は神社の境内にいた。正確には社の前の石畳の上だ。

僕はゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡す。当然のように誰もいない。

ただ先程までいた空間とは違って和やかでありながら、

厳かな雰囲気を漂わせていた。


社はとても綺麗で、まるで新築のようだった。

金色に輝く観音扉、まだ色落ちしていない柱や壁の朱色、一枚も欠けていない瓦。

中でも観音扉は異様なほどの存在感と共に輝いていた。


僕は誰に命令されたわけでもなく、観音扉に手を掛けた。

まるで僕の本能が働いたかのように。


中は特に目立つような物も無く、見た目よりも広い部屋と、

まるで新品のように青い畳があるだけだった。が、


僕にはそんな事よりも気になる事があった。



社に入った瞬間から、空気が重い。


そう、まるで母親が僕の部屋の前にいるかのように...。



この恐怖には慣れているし大してビビりはしないが、当然ここに僕の母親など

いるはずもない。つまりこの部屋に何かがいるのだ。


僕は意を決して声を出した。


「......誰か居るのか?」


その声に呼応するように、どこかから声が聞こえてくる。


「......ワシの気配に気付くとは...お主、中々に優秀よのぉ」


予想外だった。まさか本当に幽霊がいるなど思ってもみなかったからだ。

まるで部屋全体から聞こえてくるような、しかし目の前で声を掛けられたかの

ような不思議な声の感触だった。


そして声自身も艶かしく、妖艶なものであったが...どこか幼い。



「ど、どこにいる!!姿を現せ!!」



完全にビビっていた僕は出せるだけ大きな声を出して威嚇した(つもり)。

すると、


「う、五月蠅い!そんなに大きな声を出さずとも聞こえておるわ!」


僕のすぐ近くで声が聞こえてきた。パッと振り返ってみても人影はない。


「ここじゃ、ここ。」


髪を引っ張られた。そこでようやく、僕は誰かを肩車していることに気付く。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」


吃驚しすぎて腰を抜かして綺麗に尻もちをついた。

これだからビビりは...などと自分でも情けなくなる。


そして肩車していた何者かも、僕が腰を抜かしたことでふぎゃ、という声と共に

背中から畳に落ちる。多少痛がっていたが、すぐに起き上がって、


「な、何をしよるか、お主!!」


「そ、それはコッチのセリフだ!!」


お互い腰が引けた状態での初会話。


何はともあれ、こうして僕は幽霊の少女、「レン」と出会うことになる。






初投稿です。

宜しくお願い致します。m(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ