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氷竜の盾  作者: ま蔵
吹き荒れるは風
5/10

月光

短いですが。

憎かった。

只々憎かった。

何が憎いのかと尋ねられれば、エイルは答えに詰まってしまうだろう。

「ヴェルガルド」の軍勢とも言えるし、

不甲斐ない自らの軍と己自身とも言える。

徹底的に追撃してきた敵の大将とも言えた。

あらゆることが憎かった。

戦いを嫌う彼女にそれを強制する世の中も憎い。

淀んだ感情が彼女の中で渦巻いている。

何よりもそれが一番憎いのであった。


(それにしてもあの男……。)


エイルは、先の会戦で敵の大将と出会った。

ファーガンという名の、自分と同い年位の青年だった。

高い背、整った顔、精悍な声……。

エイルは何度も記憶を反芻させていた。

体の奥が熱い。

彼女自身初めての感情だった。

心から憎い筈の男の事を、片思いに悩む娘のように

想像していることに苛立ちを隠せない。

次会うときは、一体どのような立場で

出会っているのだろうか。

きっと敵として相見えるのだろう。

「スヴィヨッド」はまだまだ遠い。

月明かりが海を照らし、明々と輝いていた。




ガラスの杯に入っている水が、

月の光を妖しく揺らしていた。

寝台に入ったが妙に落ち着かない。

その様に魅入っていると、あの女の事がぼんやりと浮かんできた。

美しい、あの女を見たときの素直な感想だった。

背が高く、長い手足、

透き通るような切れ長の目に、

雪の様に白い肌。

流れる様な長い髪。

詩的な程に美しい。

敵でなかったら、と一瞬考えた。

ファーガン自身これには驚いた。


(あの女、名はなんと言うのだろう。)


名も知らない女。

敵の女。

余りに遠いからこそ、

よりファーガンの意識に深く存在するのだろう。

薄っすらと感じる微熱の様な感覚の中、

ファーガンはそっと目を閉じた。


長い間空白期間があって、

久しぶりの更新の為、

準備運動的な短さですがご了承ください。

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