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ぼうけんのしょ その1の3

ぼうけんのしょ その1の3 はじめてのテイムあんど釣り


 それから1刻ほどはさらに近づいてきていたヌイや、コネを相手にモフモフナデナデしつつ初級調教師のスキルを上げたり、持ってきた残飯で餌付けして相棒になってくれそうな魔物がいないか様子をみたりと意外に充実した時間を過ごし、ヌイとコネそれぞれ1匹づつテイムすることに成功したのです。


「むむ、テイムできたのか、そうなると職に魔物使いが派生しているんだろうか? 確認できるか?」


「はい、まものつかいになってます。これでわたしもいちりゅうのぼうけんしゃのなかまいりですね」


 そんな冗談を口にすると、タナさんから「3年早い」とデコピンを喰らってしまいました。でも3年なんですね、意外と私の評価が高い気がするんですが、なぜなんですかね?


「そんなことより、テイムした魔物の名前を決めてあげないと、名無しのままではしばらくしたらまた野生にもどってしまうぞ」


「そですね、ならヌイは“トゥラ”で、コネは“ポティ”でいいでしょう」


「ふむ、“トゥラ”と“ポティ”か、いい名前じゃないか」


 そうでしょうそうでしょう、ペットを飼ったら名づけようと考えていた名前なので、褒められるとうれしいものです。トゥラとポティも自分達の名前に満足なのか私の周りでぴょんぴょん跳ねたり、転がったりしていた。


×××


 そんなこんなで、冒険を続けましょうということになり、同行者に2匹のペットが追加された私たちは入口から少しばかり離れた川辺にたどり着いたのでした。


「むむ、まさかまさかですが、ここでつりでもするんですか?」


「うむ、そのまさかだね」


 なんでも、この階層の主な採取物はナカサらしくここでしか釣れないものもあり、場合によっては高値で取引されるのだとか。


「たかいものってどんなねがつくのですか」


「一番高かったのは、ログマの2メロ級だね、たしか屋敷が買えるくらいの値がついてたが……」


 なんと、ナカサでも種類によってはお屋敷が買えるのですか、これは頑張らないといけません。もしかしたら、私も一攫千金で大富豪になれるかもしれません。


「いや、こんな入口付近の釣り場では釣れないぞ。それこそ、何カ月と潜る準備をして離れた釣り場に行かないと」


 しおしおしお、とせっかくの夢物語が消えてなくなってしまったのですが、それでもタナさんが釣りの準備をするので、私もその隣で釣りをすることにしました。


 トゥラとポティには、近くで適当に遊んでおくように指示を出し、釣りの準備を終え、釣りを始めると、タナさんも私もだんだんと言葉が少なくなってきた。でも、糸を垂らした釣り竿をみているだけというのは本当にどうなんだろう。

しばらくなにもないので、トゥラとポティに構いだし首回りを撫でまわしてやったり、お腹を撫でまわしれやっていたりで気付くとお日様は真上にあり、お腹の空く時間になっていた。


 く、く、くぅー


 私のお腹から、いるかもわからないシムの鳴き声がいつもより良く聞こえてきます。恥ずかしさでほっぺたが熱を持ってしまいます。そんな私の様子が可笑しいのか、くっくっと忍び笑いをもらしているタナさんがいました。


「そろそろ、お昼にしようか」


「そうしましょう、そうしましょう。おなかがすいてはなにもできません」


「くっくっ、君は本当に食べるのが好きだね」


「たべることがきらいなひとはいないとおもいますけど?」


「そうだ、道理だね。でも、おいしくないものがあったりすると違うだろう」


「じぶんでじゅんびしないひとにはきょひけんはないでしょう」


 なんやかんや、と話をしながら私とタナさんは準備をしていた携帯食を食べつつお喋りをしていました。うむ、村で食べていたトテポ餅と違ってこの携帯食“イメリロキ”は固めのパンのようでありながらも程良い甘さを感じさせる素晴らしい食品だ。


「そういえば、テイムしたようじゅうたちのえさはざんぱんだけでいいんでしょうか?」


「ん? ああ、いや。幼獣や魔物には基本的に餌はいらないよ。彼らは世界の魔力やテイムした相手と繋がったパスから魔力の供給を得て存在するから」


「ふぇ、そうなんですか? えさはいらないんですか?」


「お金のないうちは、ね。ただ彼らも生きているから嗜好品としてたまに御馳走をあげるのは間違っていないよ」


 なんということでしょう、テイムした魔物は餌いらずの素敵ペットだったとは。しかし、こんな可愛いペット甘やかせずにはいられません。餌がいらないからと何も与えないのはご主人様失格でしょう。


「ふふ、そうだね。そういった素直に優しい気持ちを持てるからその子たちも君にテイムできたんだろうね」


「ほめてもなにもでませんよ、でも、わるいきもしないのでトゥラをなでるけんりをあげましょう」


 なんてほのぼのした雰囲気の中、突然にそれは起きたのです。川に垂らしていた釣り糸が急に水の中にもっていかれ釣り竿が軋み、今にも折れそうに音を上げながらしなっていたのである。


「ふぉ、なんかさおがうごいてます。いきものでもないのにげんきがあるなんてふしぎです」


「む、ナカサが掛かったみたいだな。頑張って釣り上げるぞ」


 ナカサがかかる?と首を傾げている間も釣り竿は元気よく右へ左へしなっている。タナさんが近づき竿を持ち、こちらを見て首を傾げる。


「どうした、せっかく釣れたのに逃げてしまうぞ」


「にげるですか?」


 いまいちタナさんが何を言いたいのかよくわかりませんが、近づいて竿を受け取ります。


「うぁ、なんかうごいてます。うごいてますよ」


 慌てる私をみて更に首を傾げるタナさん。動く竿を持ち更に慌てる私。そんな私の周りでくるくる自分達のしっぽを追いかけているトゥラとポティ、とても可愛い。場が混迷する。其の様はまさにカオス。


 そう、この時の私は何を隠そう「釣り」というものが「ナカサ」を得る手段であることは理解していても、それ自体どういった作業であるかまったく理解できていなかったのである。


「あれ、もしかして釣り自体ははじめてなのか?」


 私の慌てぶりをしばらく観察してからようやくそのことに気付いたタナさんはやっとこさ、アドバイスらしいアドバイスをし始めた。

いなっている竿を持ちながらも懸命にアドバイス通りに動き私は初めての釣りを終えることができたのでした。


×××




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