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自問自答

藤崎は立ち尽くしている。止めたはずの自転車が無くなっているからだ。ついてない日はとことんついてない、というが今日がまさしくその日だろうな、と思った。


 レンタルショップでの出来事を思い出す。


 彼女にDVDを渡すと彼女がDVDをじっと見つめた。その間1秒もなかったかもしれないが藤崎は彼女が嬉しそうな表情をしたように見えた。


「洋画珍しいね。」彼女が言った。


「えっ!?」藤崎が突然の問い掛けに驚く。


「中学のとき塾が同じだった、藤崎くんだよね。前から思ってたんだよね。」彼女がレジを打ちながら言った。


「ああ、うん。おれも気付いてたんだけど、覚えないかな、と思ってたんだけど…」


「覚えてるよ。」彼女は笑顔を見せた。


「そうなんだ。良かった。」


「私、今日でここのバイト最後なんだ。」彼女がDVDを袋に入れながら言った。突然のことに藤崎は頭を殴られたような衝撃を受ける。


 その後のことは覚えていなかった。自転車を乗って帰る途中に立ち眩みのような症状に襲われ、コンビニに入った。


 どうせなら、と今夜は自棄酒とやけ食いをしようとコンビニで商品を選んでいると長身の男が入ってきた。柔らかそうな髪が美しく、中性的な顔立ちで目が大きかった。


 自分もあんな顔立ちだったら、はっきりと気持ちを伝えられただろうか。


 いや、関係ないだろう。そもそも、『もしも』の話しをしても仕方ないだろう、と思い直し適当なお酒とアイスとお菓子を買って店を出ることにした。


 コンビニでは珍しく2000円以上も使ってしまい、コンビニの店員に「告白も出来ないくせにコンビニで2000円も使う腰抜けめ」と見下されているのではないか、そんな被害妄想に襲われる。


 大きいビニール袋を持って店を出て、自転車に戻る。自転車に戻るまでに葛藤に襲われる。


 このまま、家に帰っていいのか? 自問自答が始まる。


 このまま、気持ちを引きずったまま、この先を過ごすのか?


 そんな、自問自答をしながら自転車に戻ったが、自転車はなくなっていた。

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