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7/13

チャンスは準備をしているものだけに訪れる

外は思いの他暑かった。10月に入ったというのに秋の訪れににはもう少し掛かるのか、と藤崎は夏の粘り強さに感心する。


 藤崎は自転車に跨り、レンタルショップを目指してペダルを漕ぎ始める。


 藤崎の目指すレンタルショップは藤崎の家から最寄りのレンタルショップではない。もう一つ、藤崎の家から近いレンタルショップがあるのだが、藤崎はあえて1個遠いレンタルショップを利用している。


 理由は可愛い女の子がいるからだ。


 たまたま、入ったレンタルショップで藤崎は恋をした。いや、正確にいえば恋を思い出したのだ。


 中学生のときに塾が同じだった、密かに淡い恋心を抱いていた女の子に偶然出会ったのだ。


 だが、藤坂は声を掛けることが出来ず、時はどんどん流れ、体は大きくなっても心は淡い恋心を抱いた中学生のままだった。


 4月から社会人になり、就職と同時に地元から離れることが決まっている。藤崎は振られる覚悟で、彼女に気持ちを伝えることを学生生活のけじめにしたいと勝手に決めていた。


 目的地のレンタルショップに着いて自転車を止める。風呂上りだったが、汗だくでTシャツが汗で引っ付いて気持ちが悪い。


 店内に入ると冷房が効いており快適だった。Tシャツの胸部分をつまみバタバタとさせる。冷気が体に入り、体から出ていた汗が一気に収まる気がした。


 いつも通り店内に彼女が働いていないのかの確認をする。自分でも気持ち悪いなと自己嫌悪に陥る。だが、彼女の姿を見つけると心臓が掴まれような感覚になり、好きだな、という気持ちを実感する。


 早く決着を着けなければと、決断しろ、決断しろ、と脳に命令を出す。だが、心が決断をしない。行動に出ることが出来なかった。


 理由もなく、店内をうろつく。


 いや、正確にいえば理由はあるのだが、レンタルショップの本来の目的とは離れているので迷惑な客になっているだろう。藤崎は申し訳なさから、先に借りるDVDを決めることにした。 


 藤崎は昔見た映画で見たいものがあった。作品名は忘れてしまったが、タイムリープをする女性の話だった。

 魔法の世界の話だ。ある事件によって世界が壊滅状態になるのだが、歴史を変えるために女性がタイムリープをして過去に戻り、事件の真相に迫るという物語だった。


 藤崎は普段は邦画しか借りないが、記憶によると洋画だったので洋画コーナーで目的のDVDを探す。


 少し古い作品のため、探すのに手間が掛かった。藤崎がDVDを探していると彼女が洋画コーナーに現れた。


 藤崎は心臓が飛び跳ねる感覚が襲う。


 すると、後ろから長身の男が現れた。男は藤崎と同い年ぐらいで目が大きく柔らかな雰囲気を醸し出しており、いわゆるイケメンという奴だ。


 彼女は1つDVDを取ると男に何か話し掛けた。彼女は男に笑顔でDVDを手渡しており、藤崎は胸に黒い塊のような憂鬱が芽生える。


 嫉妬だ。


 男はDVDを受け取ると彼女にお礼を言って立ち去って行った。藤崎はその現場を見ていると彼女が目線をこちらに移した。


 藤崎は焦ってDVDの並んだ棚に目線を移す。藤崎はDVDを探すふりをしていると彼女はいつの間にかいなくなっていた。


 目的のDVDを見つけてレジに並んだ。レジには彼女の姿はなく、今日も声を掛けられなかった、と落ち込んでいると「お待ちのお客様こちらにどうぞ。」と声がした。


 彼女が2つ目のレジを開けて藤崎に声を掛けてきた。

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