表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣境都市TOKYO:俺たちが生き残るための、殺戮ヒグマ殲滅マニュアル  作者: AAA
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/41

第3話:熊嵐の決断と支援者

都庁地下の仮設医務室。重傷を負い意識不明のリョウのベッドサイドに、熊嵐隊長が立っていた。彼の横には、自衛隊から派遣された連絡将校が、苛立たしげな表情で待機している。


「熊嵐隊長。篠田タケルと東雲アキラの確保は、最優先事項です。彼らは国家機密を漏洩した。貴隊のリョウ隊員の件は理解しますが、鉈一本の行方など、後回しにすべきでは?」将校が冷たく言った。


熊嵐は、その言葉に静かに怒りを滲ませた。


「貴様らには理解できまい。我々マタギにとって、鉈は単なる武器ではない。それは『魂』であり、『隊員の命』だ。リョウの負傷は、タケルの『魂』が奪われたことによる動揺が原因だ。まず、その鉈を見つけねば、隊員の士気は保てん」


これは、タケルとアキラが証拠を持ち帰った際の、鉈と警棒の交換という事実に基づいた、苦し紛れの嘘だった。熊嵐は、リョウの重傷と、マタギの伝統を盾に、タケルとアキラの追跡を一時的に『鉈の捜索』という名目で曖昧化させたのだ。


将校が渋々了承し、部屋を出た直後、熊嵐は医務室の隅にいる隊員、シロウに合図を送った。


「シロウ。準備はいいな」


シロウは、タケルたちと共に渋谷を戦い抜いた隊員だ。彼は、タケルとアキラの行動の裏に、真実があることを直感的に理解していた。


「はい。隊長命令とあれば。『訓練演習用の備品』を運搬中です」シロウはそう答えたが、その言葉に含まれた意味は、タケルたちが潜伏に使える物資(医療品、食料、予備の通信機など)を、指定された場所に届けることを意味していた。


熊嵐は、深く息を吐き出した。


「俺は、組織の秩序を守るため、タケルと東雲を『裏切り者』としなければならない。だが、マタギの掟は、『理不尽に命を弄ぶ者』を決して許さない。行け、シロウ。彼らは、俺が守りたかった『マタギの未来』だ」


熊嵐は、自らの信念と組織の責任との間で、苦渋の選択をしたのだ。



シロウの運ぶ備品の中には、普通の装備に紛れて、一枚の古い山刀の手入れ用の布が隠されていた。


その布には、熊嵐隊長がかつてタケルに教えた、マタギの伝説の歌の一節が墨で書かれていた。


「…陽の落ちる山を越え、闇の奥の光を討て…」


この一節は、マタギの古い伝承に登場する「悪しき神が降臨する場所」を示すもので、ユキが解析したドクター・Aの最終目標地、渋谷の巨大電波塔を暗に示す暗号だった。


タケルとアキラの隠れ家に到着したシロウは、周囲を警戒しながら物資を置いた。


「タケル様、東雲様。隊長からの…命令です」シロウはそれだけ言うと、頭を下げて去った。


タケルは物資の中から、その古い布を見つけ出し、アキラに見せた。


「これは…熊嵐隊長からのメッセージだ」タケルは、布に書かれた一節を読み上げた。


アキラは即座にその意味を理解した。


「陽の落ちる山…電波塔の影。闇の奥の光…頂上にある主電源。ユキの解析した電波塔のことだ!」



その時、ユキとの通信が回復し、焦った声が響いた。


『アキラさん!タケルさん!熊嵐隊長からの支援物資、確認しました!そして、解析完了です!ドクター・Aの最終計画が判明しました!』


ユキは、渋谷の巨大電波塔の3D画像を映し出した。


『ドクター・Aは、この電波塔の最高出力の送信用アンテナを利用し、都内全域に散らばる異形種の残存個体全てに、一斉に高周波の起動信号を送ろうとしています!』


「何だと…!」タケルが声を荒げる。


『成功すれば、残りの獣は、自衛隊の戦術を学習した制御不能の群れとなり、東京は完全に破壊されます!』


アキラは冷静に、電波塔の構造図と、熊嵐からの暗号を重ね合わせた。


「タケルの言う通りだ。電波塔の頂上にある主電源を破壊すれば、計画は阻止できる。これが、ドクター・Aが仕掛けた『東京破壊のタイムリミット』だ」


タケルは、静かに鉈を握りしめた。彼の心には、もはや私情や迷いはない。あるのは、狩人としての純粋な使命感だけだ。


「行くぞ、アキラ。ユキ。これが、俺たちの最後の狩りだ。そして、『真の東京奪還』だ」


二人は、ユキの待つ次の合流地点へと、決戦の地、渋谷の巨大電波塔を目指して、走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
多数作品掲載中 AAAのnote
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ