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獣境都市TOKYO:俺たちが生き残るための、殺戮ヒグマ殲滅マニュアル  作者: AAA
第二部

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第8話:夜明け前の脱出と、国家の影

タケルが管理通路の鉄扉をロックしてから、わずか数秒後のことだった。


ドォン!!


地下から響く鈍い爆音が、タケルの背中を押し上げた。警備チームが追いつき、内部から扉を破壊した音だ。タケルは必死に階段を駆け上がり、地上への出口を目指した。彼の全身は、獣の爪痕と、高周波音波の余韻で悲鳴を上げていた。


地上出口を飛び出した瞬間、タケルの目の前で、隠れていたアキラが立ち上がった。


「タケル!無事か!」


アキラは、ライフルの銃床でタケルの背中を突き、廃墟の陰へと突き飛ばした。


「ああ。奴らは…知性を持っていた」タケルは、息を切らしながらも、データ端末を掲げた。「データは確保した。あとは…」


ズズズズズ…


廃墟のメインゲートから、数台の警備車両と、追撃用の異形種が姿を現した。


「あとは、この『狩場』から一刻も早く立ち去ることだ」アキラは冷静に言った。


アキラは、予め廃墟の裏手にある送電施設跡に仕掛けていた小型爆薬の起爆スイッチを押した。


ガシャン!バリバリバリ!


爆発ではなく、送電施設がショートする大きな金属音と火花が夜空を走った。これは音と光による「陽動」。


「走れ!この騒ぎで、奴らは一瞬、指揮系統を混乱させる!ユキが確保した予備の隠蔽ルートを通る!」


二人は、新宿外郭の崩れた建物の間を縫うように、闇の中を全速力で駆けた。タケルは、アキラの完璧に計算された戦術が、彼らの命を救っていることを改めて痛感した。



二人が辿り着いたのは、外郭からやや離れた、高層ビルの最上階にある廃墟の一室。ユキが事前に確保していた、通信が傍受されない「クリーンルーム」だった。


タケルは力尽きて床に崩れ落ち、アキラは周囲の警戒にあたった。ユキは、タケルが持ち帰ったデータ端末を、即座にメインシステムに接続した。


「ユキ…俺は、負けたかもしれん」タケルは荒い息で言った。「奴らは、俺の動きを完全に読んでいた。マタギの戦術を学習した…『兵器』だ」


『タケルさんのせいじゃない。相手は私たち全ての予測を超えていた』ユキは顔を上げず、キーボードを叩き続けた。


数秒後、ユキはハッと息を飲んだ。


『タケルさん、アキラさん…。このデータは…』


ユキは、壁一面のモニターに、抽出した全てのファイルを投影した。画面中央には、巨大なロゴとタイトルが表示された。


【Rebuild T.O.K.Y.O. Project:特務生物兵器開発計画】


その下には、プロジェクトの協力組織として、「防衛省 統合情報戦略局」と、複数の巨大な防衛産業企業のロゴが並んでいた。


アキラは、その光景を見て、静かに銃をホルスターに戻した。彼の顔には、怒りではなく、深い絶望と、そして覚悟の色が滲んでいた。


「やはり、我々が相手にしていたのは、ただの『研究者』ではなかった…」アキラが低い声で呟いた。


「どういうことだ?」タケルが問い返す。


「『Rebuild T.O.K.Y.O. Project』…これは、異形種の出現を『既定路線』として捉え、その混乱を利用して、国家の防衛体制と都市構造を、彼らの都合の良いように『再構築』しようとする、国家規模のクーデター計画です」


ユキは、さらにドクター・Aのログファイルを開いた。


『ドクター・Aの最終ログです。彼は、異形種を意図的に進化させ、「都市の脅威」として利用することで、超法規的な権力を握ろうとしていた…そして、その計画を阻む『不確定要素』として、私たちマタギ特殊部隊の存在を挙げています』


タケルは、痛む腕を握りしめた。これまでの彼らの戦いは、この巨大な計画にとって、ただの「雑音」、あるいは「データ収集のための障害物」でしかなかったのだ。


「熊嵐隊長が、俺たちの情報収集を拒否した理由もこれで分かった」タケルは冷徹に言い放った。「彼らは、『マタギ』という独立した存在が、この計画の邪魔になることを恐れている。あるいは…隊長自身が、この計画の一部なのか」


アキラは窓の外、静まり返った新宿の空を見つめた。夜は明けていないが、彼らの心の中には、既に新しい戦いの夜明けが訪れていた。


「タケル。俺たちの『狩り』の定義が変わった。獲物は、もはや獣ではない。『国家の影に潜む、傲慢な人間たち』だ」アキラはタケルに目を向けた。


「我々は、真実を掴んだ。あとは、この情報を『光』の下に出すことだ。ユキ。『影のネットワーク』の最終目標を、彼らの『闇』を暴くことに設定する」


タケルは、鉈を鞘に収めた。彼の目には、焦燥ではなく、鋼鉄のような決意が宿っていた。


「上等だ。国家だろうが何だろうが…山の掟を破り、命を弄ぶ者は、『狩られる獲物』に過ぎない」

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