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獣境都市TOKYO:俺たちが生き残るための、殺戮ヒグマ殲滅マニュアル  作者: AAA
第二部

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第4話:廃墟への潜行:『二人の侵入者』

新宿外郭。高層ビルの群れが途切れた先に、目標の旧・東都生命科学研究所跡地の巨大な廃墟が横たわっていた。鉄骨が剥き出しになり、ガラス窓がすべて割れたその建物は、夜の闇に飲み込まれ、まるで巨大な墓標のようだった。


「ユキ、施設の熱源反応は?」アキラが極限まで声を潜めて無線で尋ねた。


『…アキラさん、建物内部に活動中の熱源が複数。人間と異形種、両方の反応があります。外部の残党は、不規則なパターンで巡回中。おそらく、高度な音波制御を受けています』ユキの声は、微かなノイズに覆われていた。


アキラは、タケルにハンドサインを送る。『異形種・音波制御』。


「タケル。獣を殺すな。触れるな。完全に『影』となれ。俺は、監視ドローンで死角を確保する」


「了解した」


タケルは、音を吸収する特殊素材の軽量スーツに身を包み、暗視ゴーグルを装着した。彼は腰の鉈だけを装備し、アキラが指し示した巡回ルートの死角から、廃墟の外壁沿いに滑り込む。


その歩みは、マタギの持つ『風切り』の技術。風を切る音さえ立てず、僅かな小石一つ踏み砕かない、完全なステルスだった。


外周には、アルファ残党の異形種が巡回していた。彼らは以前の群れとは違い、無駄な動きがなく、規則的なルートを辿る。まるで、訓練された番犬のようだ。


タケルは、巡回獣の体毛の微かな擦れる音を頼りに、その間隙を一瞬の逡巡もなく縫っていく。獣の鼻先をわずか数センチでかわす、紙一重の緊張が張り詰めた。



アキラは、少し離れた廃車の陰に身を潜め、小型ドローンを飛ばした。ドローンは、ユキのハッキングで一時的に敵の通信周波数をジャミングしながら、廃液処理管へのルートをスキャンする。


「タケル、処理管の入り口に到着しました。ドアはロックされている。ユキ、解除できるか?」


『セキュリティは旧式ですが、物理ロックです。アキラさん、あなたが持っているC4起爆装置の微弱な電磁パルスで、一時的に回路をショートさせられます。ただし、5秒が限界です』


アキラは、用意していた微細な起爆装置を、処理管の分厚い金属製ハッチの接合部に貼り付けた。


カチッ。微かな電子音と共に、ハッチのロックが解除される。


「タケル!今だ!」


タケルは躊躇なく、錆びて悪臭を放つハッチの隙間から、狭い廃液処理管へと身を滑り込ませた。廃液のぬめりと、金属の冷たさが全身を包む。


ハッチは、タケルが内部に入ると同時に、バチッという音と共に再ロックされた。



処理管の内部は真っ暗で、タケルの暗視ゴーグルがなければ、何も見えなかっただろう。


タケルは、アキラが渡したクローラーを前方に這わせた。クローラーの微細なカメラが捉えた映像が、アキラの端末に送られる。


「パイプの先、右へカーブ。内部に監視センサー、機能停止を確認」アキラの声が、タケルの耳元で囁くように響く。


タケルは、アキラの正確な指示を頼りに、処理管の中を四つん這いで進んだ。廃液の溜まりを避け、パイプの継ぎ目を利用して、まるでパイプと一体化したかのように進んでいく。


その時、頭上のパイプを何かが這う音がした。異形種の群れだ。


タケルは動きを止め、呼吸を整えた。彼は、自分の心臓の音さえも殺そうと努めた。


「静かになれ、俺の心臓。俺たちは、獲物ではない」


幸い、廃液処理管は、獣が感知できる音波の範囲外だった。タケルは再び前進し、やがて、処理管の終点に到達した。


そこは、研究所の地下深くにある、巨大*鋼鉄の扉が設置された空間だった。扉の隙間からは、微かに空調の低い唸りが聞こえてくる。


「アキラ。到着した。地下のメインラボへの入り口だ」


「了解。タケル。そこからが、俺たちの『狩り』の真の始まりだ」


アキラは、処理管の外で、タケルの帰る道となるかもしれない、緊急脱出用の爆破ルートの設置を開始した。一方、タケルは、目の前の鋼鉄の扉の、唯一の弱点を探し始めた。

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