第22話:最終防衛線:『TOKYO奪還へ』
都庁地下駐車場。侵入を察知した残党の群れが、地下通路から次々と雪崩れ込んできていた。
「来るぞ、アキラ!配置に就け!」タケルが叫ぶ。
タケルは駐車場への主要な入り口の瓦礫を背に、鉈と散弾銃で防御線を張る。彼に迫る異形種は、アルファの支配を失ってこそいるものの、その凶暴性は増していた。
タケルは、獣の群れが一定のラインを超えることを許さない。鉈の一閃、散弾銃の一発で、常に獣を押し返し、アキラがトラップを仕掛けるための『時間』と『間合い』を確保する。
「アキラ、残り時間!」
「あと90秒!タケル、あと少しだけ抑えろ!」
アキラは、地下駐車場の天井を支える支柱に、プラスチック爆薬を迅速にセットしていく。彼の動きは、元自衛官候補生時代に培った冷静さと正確さに満ちていた。
爆薬の設置中も、異形種がアキラの背後に回り込もうとする。その都度、タケルは体をねじり、「唸る鉈」を振るってアキラを護衛した。
「俺の背中は、獲物が入る間合いじゃない!」
タケルとアキラの間には、一寸の狂いもない信頼の線が引かれていた。
「設置完了!光ケーブルシャフトも、手製の油と発火装置で準備OKだ!」
アキラは爆薬の起爆装置を手に、タケルの隣に合流した。その瞬間、異形種の群れが最後の猛攻を仕掛け、タケルの防御ラインが崩れそうになる。
「今だ、アキラ!やれ!」タケルが叫ぶ。
アキラは躊躇なく、駐車場天井の支柱に仕掛けた爆薬を起爆させた。
ドオォォン!
地下駐車場全体を揺るがす爆音と共に、支柱が折れ、天井の一部が巨大なコンクリートの塊となって、獣の群れの真上に崩れ落ちた。
ゴオオオオ…!
土砂とコンクリートの塊が、地下通路からの侵入ルートを完全に塞いだ。獣の悲鳴と、瓦礫に押し潰される音が響き渡る。
「第一防衛線、封鎖成功!」アキラは勝利を確信した。
しかし、その安堵も束の間だった。
『タケルさん!ダメです!光ケーブルシャフトに、人間のハッキングを解除するための信号が送られてきました!これは遠隔操作でトラップを無効化しようとしています!』
ユキの警告が無線で響く。
「人間側の敵だ…!ユキ、トラップを起動させろ!」
アキラが叫ぶが、起動シークエンスの途中で、外部からのハッキングによって、トラップの制御がユキの手を離れようとしていた。
「間に合わない…!」アキラが歯噛みする。
「光ケーブルシャフトは、俺が封鎖する!」
タケルはそう言うと、持っていた予備の散弾をアキラに手渡し、光ケーブルシャフトの入り口へと走り出した。
「タケル!何を!?」
「油と発火装置を仕掛けたのはお前だろ!アキラ、お前は火炎の起動パスワードを知っている!」
タケルはシャフトの入り口に到着すると、自ら光ケーブルや配管を鉈で切断し、トラップに使用する油の貯蔵庫を鉈で叩き割った。油がシャフト内部に流れ落ちる。
「アキラ!パスワードを叫べ!俺が、この『火炎の壁』を完成させる!」
タケルは、自らの命を顧みず、シャフトの入り口に立ち、アキラからの指示を待った。
アキラは、目の前のタケルの命と、都庁の安全を天秤にかける、究極の選択を迫られた。しかし、彼らの間に生まれた「心臓と頭脳」の絆が、アキラに決断させた。
「パスワードは……『YAMANOJI-1954』!ユキ、この周波数をジャックして、爆破信号を上書きしろ!」
アキラの指示を受けたユキは、涙を流しながらも、最後の力を振り絞ってハッキングを試みる。
カチッ。ボオォォ!
油に引火し、光ケーブルシャフトの内部が、轟音と共に灼熱の炎の柱となった。地下の侵入ルートは、完全に焼き尽くされた。
タケルは炎の直撃から辛うじて逃れたが、全身に火傷を負い、その場に倒れ込んだ。
アキラが急いでタケルに駆け寄る。
「タケル!無事か!」
「…ああ。なんとか、な」タケルは荒い息の中、アキラの顔を見て力強く笑った。「これで、都庁は守ったぞ、アキラ」
熊嵐隊長が、隊員たちと共に作戦室から駆け下りてきた。地下の惨状と、タケルとアキラの満身創痍の姿を見て、熊嵐は言葉を失った。
「タケル…東雲…」
アキラは、ユキの解析データが記録されたタブレットを熊嵐隊長に差し出した。
「隊長。獣の脅威は一時的に去りました。しかし、我々の敵は、『人類の傲慢』です。この怪物を生み出し、今、私たちを襲おうとした人間側の敵です」
アキラは、夜明けの光が差し込む地下通路の入り口を見つめ、決意を新たにした。
「我々の狩りの目的が変わりました。これより、私たちは、この陰謀を暴き、この都市から『獣の脅威』と『人の悪意』を完全に一掃します。『東京奪還』は、ここからが本番です」
タケルは横たわりながら、アキラの決意に静かに頷いた。彼らの戦いは、次のステージへと進む。
(【第一部】完。第二部へ続く)
一部ここで終了です。
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