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獣境都市TOKYO:俺たちが生き残るための、殺戮ヒグマ殲滅マニュアル  作者: AAA
第一部

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20/41

第20話:都庁への帰還と『人類の傲慢』

 渋谷駅地下街の掃討を終えたタケルとアキラは、夜明けと共に都庁の仮設拠点へと帰還した。彼らの体は泥、血、そして崩壊した建材で汚れ、限界まで疲弊していた。


隊員たちが彼らを拍手で迎え入れるが、その顔には安堵と同時に、失われたリョウへの哀悼の念が浮かんでいる。シロウはリョウを抱えて撤退したものの、リョウは重傷を負い、意識不明の状態だった。


作戦室に戻ると、ユキがすぐに二人を迎え入れた。彼女の目は充血し、徹夜で解析作業をしていたことがわかる。


「タケルさん、アキラさん、お疲れ様でした。渋谷の群れは完全に分断され、掃討作戦は成功です」ユキは彼らに温かい飲み物を差し出した。


「ああ、リョウは…」アキラが尋ねる。


「最善を尽くしていますが、まだ予断を許しません。しかし、リョウさんの犠牲は無駄にしません。私、タケルさんとアキラさんに、絶対に話すべきことがあります」ユキは声を低め、二人を解析画面の前に促した。



 タケルとアキラがシャワーで泥を落とし、最低限の休息を取った後、熊嵐隊長との作戦報告の場が設けられた。


報告は順調に進んだ。アルファ討伐から、渋谷の群れの殲滅まで、二人の若き狩人の功績は揺るぎないものだった。


「見事だ、タケル、アキラ。貴様たちの連携は、マタギの歴史に残るものとなるだろう」熊嵐は満足そうに頷いた。


しかし、アキラはここで、ユキから聞いた真実を切り出すことを決意した。


「隊長。報告の後に、一つ、緊急の進言があります」アキラはユキの解析データを開いた。「異形種の変異は、自然発生的なものではありません。これは、人工的に遺伝子操作された生物兵器の可能性が極めて高い」


アキラはユキの解析結果、つまり獣の細胞内に残された人工的な遺伝子操作の痕跡を、詳細に説明した。


熊嵐隊長の表情が、一瞬で凍りついた。


「馬鹿なことを言うな、東雲。山に現れる獣は、時に人の知恵を上回る。それが『山親爺』の教えだ。この熊は、あくまで山が産み落とし、都市に現れた『神の怒り』だ」


「違います、隊長!」ユキが前に進み出た。「解析データが示しています!これは、人間が、人間の傲慢な研究で作った怪物です!アルファの知性は、クマの知恵ではなく、遺伝子に組み込まれた『指揮系統』です!」


熊嵐は立ち上がり、怒りの視線を二人に向けた。


「黙れ!小娘が!貴様らは、真の恐怖を知らぬ!我々マタギは、獣を狩ることで山との契約を守ってきた。その狩りの哲学を、お前たちの『都会の科学』で汚すな!」


タケルは、熊嵐とアキラの間に割って入った。


「隊長。俺もアキラの意見を支持します」タケルは静かに、しかし力強く言った。「俺たちの鉈で、アルファの急所を叩いた時、その動きは獣の本能ではなかった。まるで、プログラムされたかのような硬直だった。それは、自然の摂理に反している」


タケルは続けた。「隊長。俺たちの戦いの目的が、『山との契約』から、『人類の敵』に変わったとしても、俺たちのすべきことは変わらない。この怪物を生み出した真の敵を見つけ、狩るべきです」


熊嵐は、タケルの言葉に激しく動揺した。タケルは、彼が最も信頼し、次の隊長にと考えていた人物だ。


「タケル…貴様まで…!」


熊嵐は、彼らの進言を頑なに拒否した。彼の世界観、彼の信じる「マタギの掟」は、人間の陰謀という概念を受け入れられなかった。


「聞け!この報告は、すべて捏造とする!今はこの都市から獣を一掃することが最優先だ!もしこの話を外部に漏らせば、貴様らはマタギの裏切り者と見なす!」


熊嵐はそう言い放ち、作戦室を後にした。


アキラとタケルは顔を見合わせた。彼らは、目の前の獣だけでなく、自分たちが属する組織のリーダーとも対立することになってしまった。


「タケル…」


「やることは変わらない、アキラ」タケルは鉈の鞘を握りしめた。「俺たちの狩りは、まだ終わっていない。ユキ、解析を続けろ。この生物兵器を『作った者』が、必ずどこかにいる」


彼らが真の敵を見つけようと決意した瞬間、都庁の地下電源が、不自然なノイズと共に、一瞬途切れた。

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