第3話 憤怒と沈黙
『江口くん、救急車で搬送された』
『今、県立中央病院の救急外来の待機室』
『助かったんだね!』
『まだ危険な状態が続いてる』
『昨日の最高気温、みんなも知ってるよね』
『確か39度を超えたって……』
『生きているのが不思議だって、お医者さんが言ってた』
『ただ、脳が損傷している可能性があるって』
『どういうこと……?』
『今は息をしているだけ』
『このまま意識が戻らない可能性がある』
投稿が止まる。
『今、待機室でお母様が大声を上げて泣いてる』
『アンタたちに見せてやりたいよ』
『子どもが無慈悲な暴力で死ぬかもしれない親の姿を』
あれからイジメグループからの投稿はまったく無い。
奈々は一枚の写真を投稿した。
秀一の写真だ。
『なにこれ……』
『これが人間のやることか?』
『江口が何したっていうんだよ』
『さっきまで威勢の良かったオマエら』
『今何の反応もしないオマエら』
『私や江口くんをイジメていたオマエらだよ』
『私は許さない』
『絶対に許さないからね』
『江口くんにもしものことがあったら』
『オマエら全員皆殺しにしてやる』
『私は本気だからね』
『覚悟してなさいよ』
『<奈々がチャットルームから退出しました>』