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大勢の前で何度も負ける――それは惨めな気持ちだった。自分に何の価値もない、なんて気分にさせられた。
(……もう一度負けたら、引退しよう)
迎えた一三戦目――やっと真相を知った。
「待ってましたーっ! 《百敗のゼキ》!」
入場しようとしたときに、ギャラリーからそのヤジを聞いた。周りにいたギャラリーが、そいつを止めている。
「バカ、本人に気づかれるだろ」
その日も試合に負けた。すぐにログアウトし、百敗のゼキでワード検索を掛ける。
そこには無数の動画がアップされていた。
〔【万年敗北プレイヤー】百敗のゼキ、今日もドラマチックに負ける!〕
〔【百万再生御礼】スーパールーザー/エゼキエル! 涙の敗北・総集編!〕
超有名な実況ギルド《ゲルニカ》が、俺に目をつけて〝熱い負けっぷりを売りにした動画〟を撮っていたのだ。
「……晒し者にされていたのか」
人生で味わったことのないような、惨めな気分だった。次の日は風邪を理由に学校を休んだし、四日経ってようやくログインできた。でも打ちのめされていて、アリーナに行くどころか狩りをする気力も湧かない。広場の噴水の前に座って考えていた。
(負けたら引退する、って決めたよな。どうせ勝てやしない。引退もいいかな……)
「あの……ゼキさんですネ?」
話し掛けてきたのは、少女のアバターをチョイスしたプレイヤーだ。褐色の肌に、長い黒髪。露出の大きい白のドレスタイプの甲冑。白い鎌をクロスするように背負っている。
「誰?」
「ワガハイを弟子にしてくださいッ!」