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人生をやり直したいとは思わないか?
まだ中学生なのに何を言っているんだ、と怒られそうだけど、俺には一つの後悔がある。
その日、朝起きた瞬間に夢を見ていたように感じた。でも、夢の内容は思い出せなかった。いつものルーティーンをこなしてから家を出る。自転車を漕ぎながら思い出そうとした。
市街地に入って、道路の向こうに線路が見えて、ようやく夢の片鱗めいたインスピレーションを拾い上げた。
「……そうか」
通学路を逸れて走り始めた。駅前通りからブロック塀に挟まれた小さい辻に入って、こぢんまりとした踏切のある場所にやってきた。畑の休耕地らしき空き地と、その向こうに森があり、民家がいくつか見える。
踏切の機械の下に、花束と、カップに入ったお線香がある。誰がそうしたのか、俺には判る。誰を偲んでそうしたのかも判る。
「夢に出てきたのは、お前だったか……」
自転車を置き、空き地で野花を摘んで、花束に添えた。
空を見ながら、電車を待った。やがて一台の電車が通った。その風圧を浴びたとき、胸が斬り裂かれるように感じた。
星野歩――星野さんの双子の妹。あいつはここで、観光用の蒸気機関車に飛び込んで死んだ。俺は歩を救えなかった。彼女が苦しんだそのとき、その場所に俺はいなかった。だから俺のせいじゃないと、自分に言い訳している。でも、違う。当時彼女が何か重いものを抱えているのは察していた。俺は歩が歩み寄るのを待った。それでは遅すぎた。俺から介入すべきだったんだ。
人生をやり直したい。不可能だってことは理解しているけど、そう思わずにはいられない。
空が青い。綺麗で、澄んでいて。あの日も、こんな空だった。あいつもこの空を見上げたはずなのに、どうして――……
「……どうして、死んでしまったんだ。歩」
もしも人生をやり直せるのなら、俺はあの日、歩の手を握って離さなかったはず。一緒に学校をサボって、一日中でも話を聞いたろう。絶対に、絶対に、絶対に、そうしたはずだ。
もっと彼女を笑わせたかった。もっと彼女が傷つかない場所を作りたかった。もっと彼女を守りたかった――。
涙が流れた。
すぐに拭いた。
さあ、もう行かないと遅刻する。俺は自転車のスタンドを蹴り上げた。




