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「…………」

「あり得ませんよ! 判ってますか? ここは異聞人類録なのですよ。同じに見えても、辿った歴史が違うのです。下手な干渉は命取りに……」

「しっ」

 試合が終わった。物議を醸した剣士が退場していくのが見えた。シルバーの目は、そのあとも水晶から離れない。

「どうしてそんなにこだわるのですか?」

「……私はリアの本気をまだ見ていない」

「殺したのでしょう?」

「実力じゃない」

「同じことです」

「決着はついていない」

「私たちには任務があるのですよ」

「さっきも答えた。拒否はしないと」

「怒りですか? それとも嫉妬?」

「……さあな」

「任務を達成すれば、あの少年は世界ごと消え去ります。それで良いではありませんか?」

「…………」

「ああ……そんな納得がいかない顔を。本当に貴方は面倒な人ですね。このあとにヘイハチロウとの戦いが控えているんですよ? そんな大仕事を前に……」

「リアも倒せないようでは、ヘイハチロウだって倒せない」

 ガヴァナーは遠くに追いやったエールに手を伸ばし、飲み干した。あからさまに顔をしかめてから、告げた。

「……行ってください」

「は?」

「彼とは、私一人で会います。ミッドガルド人の余興につき合えばいい。ただし、二つ約束を。手早く済ます。決して負けない。特に二つ目は重要ですよ」

 ガヴァナーはフォークを手に取り、シルバーに向けた。

「いまの私たちは〝ミッドガルド人に変換された〟状態であり、ネットワークなるものを利用し〝アスガルドに接続している〟のです。その過程は執行者の監視下にあり、偽装を用いてギリギリ誤魔化しています。もし負けでもしたら包囲網が敷かれるでしょう。そうなればターゲットに近づくことすら叶わなくなります。判っていますよね? この任務に失敗すれば、消えるのは私たちのいた世界です」

「……承知した」

「この任務の裏には、二人の犠牲者がいます。〝存在を上書きされて〟消えていった、この異聞人類録における、貴方と私です。失敗すれば、彼らの犠牲が無駄になります」

「言ったろう。承知した」

 シルバーは席を立ち、闘技場に向かった。それを見守るガヴァナーは呆れ顔ではあるが、口元には微かな笑みが浮かんでいた。

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