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《 暴く悦び 暴かれる悦び 》
あちきの おゆかり様ではありんせん。
稀に見かける その殿方は、
この色街で 、
独特の香りがするのでありんす。
たかが遊女に 礼儀を尽くし、
不躾で軽薄な客達とは違いんす。
けれど毒を秘めてやす。
あちきの毒にも勘づいているようでありんす。
それを 暴かれたがってやす。
それを 暴きたがっているのでありんす。
どちらの毒が強いのか、
想い巡らせ 、
悦び 楽しんでいるのでありんしょう。
荒々しさを隠して、
決して無礼な言葉一つ無う、
その内には、
女を愛し殺める 激しさが透けて見えて。
遠うから 目が合いんすと、
ぞくりと震える あちきの首筋。