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《 雷光 》
先程から降っていた雨が 大粒に変わり
嵐になった長月の初め
この妓楼の座敷から雷の光りを眺めてやす
雨降って地固まる… と よう耳にするけれど
そんな話は あちき等には唯の綺麗事
この世は
地固まる前に 次の雨が降ってくるものでありんす
雨降って雷に打たれれば
全身 焼け爛れて
苦しみに のたうち回り
業を浄化し 死ねるかもしれんせん
望んで
探しても探しても見つからねえ幸せは
雨と雷の嵐の
向こう側にあるのでありんしょう
ふと 解らなくなる時があるのでありんす
あちきは何の為に 息を吸い息を吐いて
この心の臓は動いているのか…
どれほど懸命に生きていても
次から次へと来る嵐に巻き込まれ
平穏は 土砂降りの雨と雷の音で
全く見えもせず 聞こえもしねえのでありんす
今 また雷が光り
あちきを嘲笑っているかのよいんす
それならば
この雷光に身を溶かし
消えて滅したいと願う 嵐の日




