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《 花魁慕情 》
此処 この色町で育ったのでありんすから
恋なんてものは
知らねえ心と体の あちきでありんす
此処で一番の
花魁になると決めて生きてきて
今
絢爛な簪を挿し
前結いの帯に ぽっくり履いて
そんなあちきの胸には
大きゅう虚ろな穴が開いていて
けれど 時折 その穴を
暖かい風が吹き抜けるのでありんす
一人の おゆかり様の
眼差し
深く柔らかな笑み
それが 暖かい風になるのでありんす
あちきから 抱き潰されたいと願うのは
恋というものなのでありんしょうか
あちきには解りんせん
戸惑うあちきを 知ってか知らずか
此度も 主さんは
暖かい風を運んで来てくれんした
その風を感じて
まるで 唯の町娘になった様な
そんな気持ちになるのでありんす