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第十説 トイレの花子さん

 

 ねぇねぇ… 「トイレの花子さん」って話… 知ってる?



 花子さんはね… 3階の女子トイレ3つめの個室にいて…


 扉を3回ノックした後… 「花子さんいらっしゃいますか」って呼びかけると…


 「は~い」って返事を返してくるの…


 そして扉が開いたら… そこには赤いスカートにおかっぱ頭の女の子がいて…


 そのままトイレに引きずり込まれちゃうんだって…



 怖いよね…






●第十説 トイレの花子さん






A「ねえねえ、知ってる?」


B『何を?』


A「…ウチの高校の女子トイレね… …トイレの花子さんが出るらしいよ」


B『うっそだぁ~!』


A「ホントだって! 先輩がこないだ会ったんだってさ!」


B『その人は今どうしてるのよ?』


A「え? … 別に、普通にしてるわよ」


B『じゃあやっぱ嘘じゃん。花子さんに会ったら、そのままトイレに引きずり込まれちゃうんだよ?』


A「… それがね… …ウチの花子さんは、意外と話が分かる女の子なんだって」


B『…はぁ? 何それ』


A「とにかく! 先輩がそう言ってたんだもん!」


B『…嘘くさぁ~』


A「ホントなんだってばぁ~!」



 … … …



 … こんにちは! あたし、トイレの花子さん! …



 … これをよんでるひとも、なまえくらいはきいたことあるでしょ? …



 … あたしは、この"こうこう"のトイレでせいかつしてるんだ! …



 … さあ!きょうもはりきっていくぞ! お~! …



 … … …






 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『ねえ、ちょっと助けてくれない?』


「? どうしたの?」


『… 他の個室の紙が切れてて… …花子さんの所の紙、余ってたらくれない?』


「………


 べつのばしょのトイレじゃだめなの?」


『無理!間に合わない!』


「………


 どうしても、かみがないとだめ?」


『当たり前よ!同じ女の子なんだから分かるでしょ!』


「………


 … はい、どうぞ」


『あ、ありがとう! 漏れる漏れる~!』


「… ねえ、おねえちゃん」


『え?何?』


「…どうして、わざわざ花子をよんだの?」


『え? だって開けるの怖いんだもん』


「さんかいこんこんしなければ、花子はでてこないよ?」


『あ、そうなんだ? 次からはそうするね』


「………」




 … …いまのおねえちゃん、いうほど花子をこわがってないきがするんだけど… …


 … だめだめ!まだはじまったばかりだよ! 花子、がんば! …



 



 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『ちょっと聞いていい?』


「? なあに?」


『その辺に百円落ちてない?』


「………


 おちてないよ」


『ホントに?』


「ほんとだよ」


『… 花子さん… …まさか、ガメてないわよね?』


「………


 花子、いいこだからそんなことしないもん」


『ホントに?お姉ちゃんに嘘ついてない?』


「………


 花子、おかねもってたってつかえないもん」


『あ、それもそうね。じゃあもういいわ』


「………」




 … …いまのおねえちゃん、ちょっとかんじわるい… …


 … だめ!おちこんじゃだめだよ花子!がんばって! …






 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『ゴメンね、ちょっといいかな?』


「? どうかしたの?」


『…いや… … 実は、急にアレが来ちゃってさ…』


「………


 あれ、じゃわかんない」


『…だからさ… …女の子の日、ってヤツよ…』


「? 花子はまいにち、おんなのこだよ?」


『ああもう!そうじゃなくって!』


「………」


『… 生理用品 … 持ってないかな?』


「………


 せいりようひん、って、なあに?」


『…そりゃ… …生理の時に使うヤツよ…』


「………


 せいり、って、なあに?」


『そ、そんなこと言わせないでよ!』


「おしえてくれないとわかんない」


『…だからさ… … 女の子が、中学生くらいになると経験する…』


「………


 … 花子、まだしょうがくせいだよ?」


『え!?そうなの!?』


「うん」


『ああもう!頼む相手間違えた!』


「………」




 … …いまのおねえちゃんのおはなし、むずかしくてよくわかんなかったな… …


 … こんど、ちゃんと"おべんきょう"しよっと! …



 



 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『ちょっと頼みがあるの』


「? うん、なあに?」


『私、落語研究会に入ってるんだけどね』


「………


 それ、なあに?」


『部活動の一つよ。 でね…』


「うん」


『3年生が卒業したら、部員の数が足りなくなっちゃうのよ』


「… うん」


『花子さん、よかったら入ってくれないかな?』


「………


 花子、"らくご"わかんない」


『大丈夫大丈夫!初心者大歓迎だから!』


「………


 花子、ここからでられないから、おねえちゃんといっしょに"らくご"できない」


『いいのいいの!とりあえず在籍だけしてくれればいいから! 正に幽霊部員。

 … ププッ!これ、イケるわ!』


「………」


『入部届け置いとくから!考えといて!』


「… うん」




 … …おかしなおねえちゃん…。どうしてわらってたんだろ? …


 … それに、おねえちゃん…。 花子、おなまえかくもの、もってないよ… …






 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『遊びましょ』


「いいよ! なにしてあそぶ?」


『鬼ごっこ』


「………


 花子、ここからでられないから、おにごっこできない」


『じゃあ、違うことして遊ぼうか』


「うん! なにするの?」


『かくれんぼ』


「………


 花子、ここからでられないから、かくれんぼもできない」


『それじゃ、これならどう?』


「うん」


『ドッジボール』


「………


 花子、ここからでられないから…」


『アハハハ!超マジに答えてるし!ウケんだけど~!』


「………」




 … …いまのおねえちゃんは、ただのいたずらだよね…? …


 … こんどきたら、トイレにひきずりこんでやるんだから!ぷんぷん! …



 



 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『… ちょっと聞きたいことがあるんです…』


「? なあに?」


『… どうして、私には彼氏ができないんでしょうか…?』


「………


 花子、むずかしいおはなしは、わかんない」


『…やっぱり女は顔なんでしょうか…?』


「………


 花子、おねえちゃんのおかおがみえないから、なんともいえない」


『…そうですか… …ありがとうございました』


「… うん。さようなら」


『… さようなら … 私』


「え!?」




 … …なんだか、あるいみ花子よりこわいおねえちゃんがきちゃった… …


 … もう!このくらいでくじけちゃだめ! 花子、まけないで! …






 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『うほっ! ホントにいたんだね花子たん!』


「え?」


『花子た~ん!ハフハフ!』


「………


 おにいちゃん… …ここ、おんなのこがはいるトイレだよ…?」


『ひゃ!お兄ちゃんだって! もう一回呼んで~!』


「………


 … 花子に、なにか、ごようですか?」


『ああ、うんうん! 花子たん!キミのパンツの色を教えてほしいな!』


「… どうして?」


『いいじゃないかぁ~! ねえ、教えてよぉ~!』


「………


 じゃあ、みせてあげる」


『えぇっ!ホントに!? うっひょ~っ!』


「とびらをあけて、はいってきて」


『やったぁ~! それじゃ、おじゃましま~す!』


「………」


『… アレ!? …ひええぇぇ~~~っ!!』


「………」




 … …へんなおにいちゃん…。 どうして"おぱんつ"のいろなんかしりたかったんだろ? …


 … でも、ま、いっか! きもちわるいから、トイレにひきずりこんでやったし! …



 



 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「は~い!」


『新聞部の者なんですが』


「? はい?」


『今度、オカルト系の記事を書くことになりまして…。 よろしければ取材させてもらえませんかね?』


「………


 花子、そういうのよくわかんない」


『大丈夫ですよ~。2、3簡単な質問をするだけですので』


「………


 … うん、いいよ」


『ありがとうございます~。

 じゃ、一つ目の質問。 花子さんはやっぱりおかっぱ頭なんですか?』


「うん、そうだよ」


『他の髪型にしてみたい、とかはないんですか?』


「………


 花子、かみのけのきりかた、わかんない」


『美容院に行ったりはしないんですか?』


「花子、ここからでられないもん」


『伸ばしたりとかは?』


「花子、かみ、のびないもん」


『色はやっぱり黒ですか?』


「うん」


『染めたりもしない?』


「………


 そめる、って、なあに?」


『例えば茶髪ですとか』


「… よくわかんない」


『なるほど、ありがとうございます。

 次の質問。 花子さんの服装は赤いスカートですか?』


「うん、そうだよ」


『他の服を着たりはしないんですか?』


「………


 花子、これしか"おようふく"もってない」


『流行を気にしたりとかは?』


「りゅうこう、ってなあに?」


『例えば、周りの女の子を見て研究したりとかは?』


「………


 花子のまわりのおねえちゃん、みんなおんなじふく、きてるよ?」


『なるほど、確かにそうですね。

 では、最後の質問。 ズバリ、花子さんは可愛いですか?』


「………


 花子、じぶんのおかお、みたことない」


『すぐそこに鏡がありますが?』


「花子、かがみにうつらないもん」


『なるほど、ありがとうございました。

 では最後に、花子さんの写真を一枚撮らせてもらえないでしょうか?』


「………


 とびらがしまってたら"おしゃしん"はとれないよ?」


『あ、じゃあ開けていただいていいですかね?』


「………


 あけたら、花子、おにいちゃんをトイレにひきずりこんじゃうよ?」


『あ、じゃあ結構です』


「………」




 … …花子、じつはあんまりゆうめいじゃないのかな…? …


 … ううん、そんなことない! じしんをもつのよ、花子! …











 … …もう、すっかりくらくなっちゃった… …


 … きょうはもう、だれもこないよね。 花子もおやすみしよっと …






 コンコンコン…


「(? …だれ?)」


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「… は~い!」




『夜分恐れ入ります。 隣の男子トイレの"赤マント"でございます』


「あ… こんばんは」


『はい、こんばんは』


「こんなおそくに、なにかごようですか?」


『いえいえ、大した用事ではないのですがね…


 聞くところによりますと花子さん、お洋服が一着しかない、とのことなので…』


「え?」




 … … …



 



 コンコンコン…


『花子さん、いらっしゃいますか?』


「だれ?」


『…? …先日の新聞部の者です。 花子さんの特集がとても評判よかったものですから、そのお礼に…』




「…ああ… あのガセネタきじね…」


『え!?』


「だってそうでしょ? なにひとつただしいことをかいてないんだから」


『いや、だってあれは花子さんが…』


「花子のせいにするき!?」


『… でも、花子さんの髪型は…』


「がっつりパーマがかかった、まっきんきんのドはでヘアーよ」


『はい!? …じゃ、じゃあ花子さんの服装は…』


「ざっくりスリットがはいった、おいろけムンムンのセクシードレスよ」


『エェ!? … なら、花子さんの顔は…』


「しょようじかんがにじかんの、げきもりギンギラパラダイスメイクよ」


『何おかしな方向にデビューしちゃってんですか!?』


「しょうがないじゃない!いまどき、じみなかっこじゃゆうめいになれないのよ!」


『そんなことないですって!十分有名じゃないですか!』


「うそばっかり!」


『一体何があったんですか!?』


「あんたたちにんげんになめられるのは、もううんざりなのよ!」


『どういうこと!?』


「あんただってどうせ、わたしのことこわくもなんともないんでしょ!?」


『花子さんの場合、カッコ変えたって怖くなりませんが!?』


「うるさいわね!もうかえってよ!」


『花子さん!』


「これいじょう、あたしをこまらせないで!」


『待ってくれ、花子さん!』


「… さよならっ!」


『花子さーーーん!!




 って何だこの茶番! もういいよ!』

 


 

 はいどうも。記念すべき第十説の主役は、超メジャーな「トイレの花子さん」にやってもらいました。


 今回、全体的にほのぼのした感じになっちゃいましたね。花子さんを少女に設定したため、キツめのツッコミを花子さんにさせられなくなっちゃいまして…。

 こんなんで大丈夫かな、とも思ったんですが、いつもいつもバカ騒ぎばっかりでも飽きられてしまうんじゃねーか、ってことでこのまま押し通しました。

 オチも苦労したんですが、同じトイレネタの赤マントを登場させたらサクサク書くことができました。面白いかどうかは別問題として(笑)


 ところで… 読みにくくなかったですか? 花子さんが少女であることを強調するため、花子さんのセリフをほぼ全部ひらがなで書いたので…。

 仮に読みにくくても、「だが、それが良い!」ぐらいの広い心でお願いします(笑)




 作者の予想した以上に、このシリーズ長く続いております(途中長期に渡って活動休止してましたが)。 これも、こんな下らない話を読んでくださっている皆様のおかげでございます。

 今後も応援、よろしくお願いします。今回も読んでいただき、ありがとうございました。


 若干最終回っぽい雰囲気になってしまいましたが、まだ続きますよ~(笑)

 


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