『あ』
1文字を題材にして書く遊びをしてみました。
楽しいですね。
あ。
それは誰もが最初に触れる言葉。
日本語という世界一難しく、世界一美しい言葉の頭に君臨する彼。
私は彼がどういった経緯で文字の頂点に君臨したのかは知らないが、
その棚ぼたな態度が気に食わない。
努力も何もしていない彼が他の文字よりも秀でているかのように振舞っている。
私はこれまで何をするにも1番にはなれなかった。
運動神経は言わずもがな。
手先は不器用で要領がとことん悪い。
もう後がないとがむしゃらに勉学に打ち込む。
打ち込む。
打ち込む。
ただひたすらに。
それでも1番にはなれなかった。
きっと勉学の才能もなかったのだ。
私には何も才能がない。
1番にこだわる必要はないと言う人もいるだろう。
そう。
1番になる必要なんてない。それは自分が一番わかっている。
しかし、何も1番になる能力が無いと突きつけられるのが怖い。
私に存在意義はあるのか?
その怖さから来る嫉妬。
気分を害された私は逃避する。
逃避?いや、違う。
人ではない彼を目の敵にするくらいだ。
私は世間から見れば変わり者なのだろう。
そんな美しい彼に対抗するために小説を書き始めた。
ペンネームは、相生 努。
頭文字を憎んでいた彼にした。彼のことは嫌いだ。
しかし、彼は私が生まれるずっと前からはじまりにいた。
私がもし作家になって彼をこき使う身分になったときは、
この名前を1番に持ってきてくれることだろう。
そのときまで、私は打ち込む。
打ち込む。
打ち込む。
ただひたすらに。
花開くまで、打ち込めばいいのだから。
見てくださってありがとうございました。