第二章
BGM: Gangsta’s Paradise (Coolio)
ママ:レスリー!なんであなたそんなに遅いの?
レスリー:靴下探しているのよ!
ママ:まあ、あなたったら遅く起きてきて、準備もできてなく、協調性もない。全く自己中なんだから!
(応答はない)
義理の父:ちょっと彼女にきつくない―
レスリー:あなたは黙ってて!
義理の父:(首を振りながら)なぜ彼女はこんなに私のことが嫌いなんだろう。
ママ:気にしないで。彼女、頭おかしいから。
義理の父:でもあなたも割と厳しい―
レスリー:黙れって言ってるでしょ!
ママ:あなたこそ黙って、洗濯しない靴下を探しなさい!水虫になっても知らないわよ!
(レスリー、ママと義理の父はお墓にいる。レスリーは歩きながら、亡くなった人の名前を見たりしている。ママはパパのお墓の前で少し泣いている。義理の父はママの肩に腕を回そうとする。)
レスリー:ちょっと放っておいてあげなさいよ!彼女が悲しんでいるの分からないの?
義理の父:優しくしようとしただけ―
ママ:彼女の言うことを聞く必要ないわ、スティーブン。
レスリー:なんであんた仕事してないの?もうクビになったの?
ママ:レスリー、あなた一体どういうつもり?
レスリー:(軽く涙ぐみながら)パパが生きてたらな。ママは彼と結婚しなかったのに。
(ママは顔をしかめる)
レスリー:もしママがもっとお金があって頭のいい人と再婚してたら―
ママ:(怒って)人生で一度でいいから、黙ってなさい、レスリー。今日はあなたのお父さんの命日よ。
(応答はない。レスリーは20メートルぐらい離れた茂みの後ろに男の人が隠れているのを見る。レスリーは走ってその人のところに向かうが、その途端、彼は逃げだす。レスリーは男の後をじっと見つめる。)
レスリー:(つぶやくように)なんで男の人は茂みの後ろに隠れるのが好きなんだろう?
(レスリーとマリアは日本に向かう飛行機の中)
レスリー:一緒に来てくれて本当にありがとう、マリア。
マリア:親は5日間も日本に行くのに反対していたけど、何とか説得したの。あなたと同じように、私も自分の思い通りにするのが得意なの。
レスリー:一緒に日本に行けるなんて最高よ。でもずっと一緒にいられたらいいのにね。長い間。あ、山と川がすごいよ!きっとアラスカの近くを飛行しているのね。
マリア:うん…ねえレスリー?私ちょっと眠くなってきちゃった。少し寝るね。
レスリー:いいえ、そうはさせないわよ!ゲームしようよ。あなたがゼリーの塊で私はピーナッツバターのモンスターよ!私が飛行機の中であなたのことを追いかけるの。
マリア:(笑いながら唸る)ちょっと寝かせて―
ママ:子供たち、静かにしなさい!他の人の迷惑になっているわよ!
レスリー:ママのいびきだって他の人の迷惑になっているよ。
ママ:(赤面しながら)私はいびきなんてかかないわよ!あなたはいつも問題を起こす―
義理の父:(ママの肩に手を乗せながら)落ち着いて。
レスリー:(声を張り上げて)いつも黙っててって言ってるでしょ!
(乗客は何人か振り向く)
ママ:レスリー!謝りなさい。
レスリー:マリア、行こう。この二人は放っておいて。
(レスリーはマリアの腕をつかむ。二人は通路を歩いていると、突然飛行機が大きく揺れる。)
レスリー:えっ!
(レスリーはパイロットの部屋に入る。マリアもその後を追う。)
レスリー:ドアは開いていて、パイロットは寝てる!何てことなの!
マリア:誰かが飲み物に何か入れたのかも!(テーブルの上のジュース缶を指さす。)
レスリー:そうかもしれないね。とにかく、早く何とかしないと―
(飛行機は落ち始める。レスリーはハンドルをとり、ひねってみる。飛行機は左、右と動き、ゆっくりと上に上がる。)
レスリー:やった!
マリア:レスリー!あなたパイロットの資格持ってるの?
レスリー:もちろん持ってないわ!でも才能はあるみたい。
(飛行機は宙がえりする。)
レスリー:わお!
(パイロットの部屋の外で、多くの悲鳴が飛ぶ。パイロットはようやく起きる。)
パイロット:何と―!コラ君、いったい何をしてるんだ!?
レスリー:あなたが寝ていたのよ。
パイロット:すぐにどきなさい!私が操縦するから。
(レスリーとマリアはパイロットの部屋を出る。)
レスリー:(大声で)みんな聞いて!問題は解決した。パイロットは目を覚ましました!
(みんな叫ぶのをやめる。)
男性:つまり、パイロットは寝ていたの?
レスリー:そうです。
女性:誰が操縦していたの?
レスリー:(自分を指さしながら)それは私、レスリーでございます。世界一のパイロットです。
(みんなぞわぞわする。アナウンスが流れる。)
アナウンサー:先程のひどい運転についてお詫び申し上げます。パイロットは一時的に意識を失っていました。その間誰が運転していたかは分かりませんが、もう問題はないようです。
(人々は口々に「良かった」「とんでもないことが起きてたんだな」「私のかばんはどこに行った?」と言う。)
レスリー:私だったよね、マリア?
マリア:そうよ。あなたがみんなを救ったのね。
ママ:レスリー、マリア!あなたたちどこに行ってたの?席に戻りなさい。
レスリー:(まだ驚いている乗客たちに)私、すぐに何があったか話しますから―
ママ:レスリー!
レスリー:今行きます!行こう、マリア。