2話
魔法陣に魔力を通して、転移した場所は。
「こりゃあ、王道ではあるが、森か。」
足元は雑草がはえており、露出している土は枯れ葉と混ざり腐葉土のようになっている。
樹々も生い茂り、幹の太い樹や細い樹があたりを埋め尽くしている。
1枚の絵画のように萌えた緑がキラキラと輝いている。
少し開けた土地にでてきた俺はバッグを地面に置いてしばらく立ち尽くしていた。
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「まぁ、幸先はいいほうだな。」
周囲に敵対生物がいないかを軽く確認した後に独り言をこぼして俺は拠点を作るべく、準備を始めた。
地球から持ってきたものは肩からさげたバッグと背中のリュックサックだけだ。
その中から必要と思うものを取り出していく。
まずは水源の確保だ。
バッグから水の入ったペットボトルを取り出してからそのあたりにある倒木を魔力で浮かす。
「・・・・・ここでいいか。」
拠点の完成予想図と立地を頭に描きながら魔術を唱える。
《索敵:水源》《精霊魔術:樹工》「井戸となれ。」
ペットボトルから水が溢れ、水の蛇となり地中にもぐった。
倒木は新芽と枝をはやしながら井戸になっていき、水源を見つけた蛇が井戸の底に水をつなげた。
「我ながらいい出来だな。・・・・次は・・。」
一番大きいと思われる大樹のそばに行き、バッグから透明な瓶を取り出した。
光を放ちながら瓶の中で粉が舞っている。
キノコの胞子だ。
瓶のふたを開けて魔術を発動させる。
《成長:茸》《創造:茸のアトリエ》「芽吹き、形となれ」
宙に舞った茸の胞子は大樹につくと、成長していく。
「・・・・樹木も整えるか。」
バッグから木の破片と種が入った瓶を取り出しながら家のイメージを描き、唱えた。
《成長:樹木》《創造:茸と木のアトリエ》「芽吹き、形となれ」
「・・・・まぁ、こんなものか。ここはあとで手直しするとして他のところも揃えていくか。」
そう、独り言を言いながら俺は他の部分を手直ししていった。
作業時間的には2時間くらいだが、今後の住処になるアトリエが完成した。
樹木に埋まり、茸の中をくりぬいたり、茸と樹木で屋根が生い茂ったりとなかなか魔術士らしい幻想的なアトリエになったと思う。
アトリエの周りには畑ができ、井戸の周りにはアトリエの完成と同時にいついた茸の胞子の小人や木の妖精が遊びまわっている。
内装もこれまで使っていた道具をメインに魔術で揃えていった。
ベッドは作れなかったのでしばらくはハンモックで寝ることになる。
ここら辺の地形の探索とかを済ませたらどっぷり魔術漬けの生活になるだろう。今から楽しみだ。