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勝利よりまず(星奈&シーナ)

勝利よりまず(星奈&シーナ)





 奏進の先鋒が予想以上に粘って、時間がダラダラと過ぎた末に負けたのは正直どうでもよかった。ギャラリーの方から数人が試合終了と同時に飛び出してきて、すぐに保健室に連れて行こうとしたけど「まだ試合中だ! 試合に関係ない奴はくるな!」と一喝したら、動きを止めた。その中学生に片瀬がなにかを告げて、ようやく元の場所に戻って第二戦が始まった。


 一戦目で疲労が溜まった先鋒は蕾の提案で最後に回すことにして、両校が次鋒同士の対決となり、予想通り奏進は二連敗した。

 これがこの学校の団体戦に対するいつもの姿らしく、「これから、これから」と場を盛り上げようとする声が聞こえてくる。

 それは八代星奈にとって関係ないことだった。


「ようし、最初から飛ばしていくよ!」


 慣れない言葉をいう星奈はどことなく変だったが、それ以上に変な試合が早くも二試合行われていた。その間に、遅刻した神童高校マネージャーが「遅れました、です……」と息を切らしていたが、星奈は二試合終えた後も呼吸一つ乱していなかった。





 佐須来夏が到着したのが、星奈の試合が終わった直後だった。それを見た剛志は道場をいったん出て、来夏と話をする。


「噂に聞いていたけど、あれは本当にただの女子高生なのか? どこかの殺戮部隊の隊長かと思ったぜ」

「それは真人の父のことを言ってるのですか? ――いえ、彼は少し違いましたね。どちらかというと一般人に近い方です」


 ズレたことをいう来夏を心配して、剛志はその頭に手をのせてみる。


「大丈夫か? 昨日何があったのかについて、とやかく言うつもりはないけどな。俺は心配した。真人やお前のどちらかでもいなくなれば、俺はきっとまともじゃいられなくなる」


 危機に迫る様子でかけ足になっている剛志に来夏は待ったをかけて、頭の上にのっかっている手を振り払う。


「気持ち悪いです」

「なら、帰ろう」

「剛志が」

「俺は別に気持ち悪くない」


「……他校の女生徒に興奮して――、身近な知り合いが現れたと思ったら手を引いて人気のないところへ誘い込む。そして、その子を心配するふりをしてボディータッチをさりげなくしてくる気持ち悪い斎藤、といっているのですが? どこか間違いましたか?」


「俺って、どう見えてるの?」

「……それで八代さんがどうしたんですか?」

「そこをスルーしないで! お願いだからもう少し話そうぜ! 俺は友達に対してどんな接し方をすればいいのか悩んじゃうよ!」


「ふっ、醜いですね――それで、次はあの子と八代さんと言うことですね」

「――――――いや、なんだろう……試合なんてどうでもよくなってきたな。帰ろうかな」


 それを聞いた来夏がスタスタと道場へ戻ろうとするところへ再びボディータッチ……でなく、手を伸ばして「そんなことはないぜ! 試合は楽しみだからな!」と無理して笑って心が泣いている剛志と来夏は試合の場所へ戻った。

 そこでは剛志が言うとおり、シーナと互角に渡り合っている普通の女子高生がいた。

 見た目も、動き自体も普通の逸脱せず、政道のような特殊能力や、シーナのような鎖を持っているという様子ない。


 そんな人が、鎖をとき掛けているシーナ相手に互角にやっていることだけが異常だった。


 謎の物体を倒したときから鎖が解けかけているシーナは、夜道に襲われたときもいまも戦えば熊ぐらい倒せるほどの身体能力を有している。

 その足は風のように駆けることができ、その手はスイカくらい握りつぶせるだろう、握ることが出来ればだが。

 星奈が、またシーナの横を取った。


「なんダ、それは」

「あんたに合わせたらこのくらいでしょ?」

「おもしろい奴ダナ。モットモット強くなれるのカ?」


 楽しそうにするシーナと星奈をみて、互いのメンバーは様々なことを思っていた。

 子供の成長を嬉しく思うような二人は、


「全国区ってこんなのばっかなのか? それなら俺はどうすればいい」

「どうもするな、です。お前の眼は節穴か、です」

「どういう意味だよ! 分からねえよ!」

「まあ、見ていればわかるです。この勝負は結局――シーナの勝ちで終わりです」

「そうなのか? その“結局”というのがあいつの鎖が外れることを意味してるなら俺はあいつを止めるぜ」

「違います。そう言うことではないんです。問題は――」


 先日の試合の再現を見ているようで不機嫌なクラウドを横に、難しい顔をした蕾が厳しい目で星奈を見ていた。その横で耀はぐったりとしている。


「クラウド、この勝負は星奈の負けでも問題ないか?」

「あいつはアレで全力なのか?」

「疑問に疑問で返すのは止めてくれないか。いまはそんなに気分がすぐれないんだ。答えてくれ」

「ああ、見ての通り、あのままならあいつが勝つだろ。どう見ても後の先を取ってるのはあいつだ。ちっさいほうも動きこそ最初は驚いたが、強いのかどうかはっきりしない。そうさせているのもあいつだろ」

「……そうか、なら。この勝負は相手の勝ちだ」


 来夏が剛志に問題を告げるとすぐに、その反対側にいる蕾が立ちあがり審判の方へ歩いて行った。蕾が審判に何かを告げたところで、「八代星奈の棄権により、神童高校の勝ちとする!」と対戦中の二人をよそに審判が告げた。


「どうして止めるんだよ、蕾!」

「この勝負に君が勝てそうだったからだ」


 危険とみなされて強制的に試合を中断された星奈は、蕾に掴みかかった。


「そうか、そうゆうことかよ! 今の部長はずるいんだな! 部活のことを考えて、ここで終ってもらっちゃ困るから、わざと中堅のあたしには負けさせたのかよ!」

「……本気でいっているのか?」


 試したような視線で蕾はにらみ返すと、すっと胸ぐらに掴みかかっていた手を星奈は引いて、ぐったりしていた耀の横へ座った。

 正座で座っていた待機時とは違い、だらしない様子で足を前に投げ出す形で。

 そしてそれを審判は咎めようとしない。


 それを見て来夏に聞いていた剛志が納得したようにつぶやく。


「怪我……か。それも座れなくなるほど酷い足の怪我かよ……」


 星奈の剣道は描写してこなかったが、謎の生命体と争ったときのテリトリーとは違うもので今日はやっていた。それがクラウド(ハンデ付)に付け入る隙を一切与えないほどのものであった。

 怪我さえしていなければもっといけた、と言うわけでもないが、その怪我のせいで勝負を焦っていたのは蕾と来夏は気付いていたのだ。そのため神童高校の副将までは一瞬にして葬り去られたのだ。神童高校の副将(部長)に関しては、負ける前提で、来夏と斎藤が話している間に負けていたのだから、その強さは頭いくつぶんか飛びぬけている。


 ここで休憩が挟まれた。

 時間が昼を過ぎてしまったため、一時間ほど休憩をはさんで開始ということになった。

 本来なら午後は共同練習をする予定だったが、少しくらいなら問題ないということで残る試合は午後に回された。

 さすがに昼食時には面や防具を外す。

 その面を今日初めて外したシーナをクラウドやギャラリーの一人になっていたフィーネはなんとなくみて、そしてクラウドの中の何か奮い立たせた。

 その人物が、二人の知る『シャイネ・ゼクス』という人にうり一つだったからだ。





クラウドVSシーナ・ゼクス


が次ですね。おそらくゆうよりは絶対です。


今回星奈の描写をないがしろにしていますが、一応試合風景は別に書いているので機会があれば――――もしくはこの後……何かがあるのか??


よろしくお願いします。

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