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ときまるR ―光に導かれし者たち―  作者: 橘西名
地上に降る天空の星ボシ
20/40

リメイク*その2

夜明けと同時に地を揺らす進撃が開始された。

 敵も相手側に、もっとも恐れていた相手がいるとは思いもしなかった。

 つい先日、拠点と言う拠点を単騎で潰しまわった謎の物体。

 怪鳥のごとき大きな翼も持たず、エネルギーを食いつぶすエンジンの類もつけない人が、何にも属さない武装で主要な拠点を潰しまくっていた。


 “どこかの国家が秘密裏に開発した人型兵器”


 始めはそう呼ばれていたが、それらの目的は拡大しすぎた戦場を収縮させること。

 一方的な暴力になりつつある戦況をひっくり返すこと。

 だれの得にもならない戦闘への介入をすること。

 それらすべてを見て、新兵器説はあやふやなまま各国の軍でその者たちが恐れられた。


 先日のことは、日本を攻めるために作られた最大の拠点が、たった一人にやられたのだ。

 真っ昼間から堂々と正面切って現れたそのものの姿は、白銀の髪を太陽の光に輝かせる少女の姿をしていた。服装もどことなく特殊な感じで杖のようなものを握りしめている。


 ――天馬と呼ばれる天界にある学区の一つで主席に立つ“ムラサキ・フォンアインス”がその日、人類なんかが到底かなわない力を持って戦場を一に戻したのだ。





 ★

 こうしてやってきた地上は、やっぱりというか。ずばりというか。結局は天界に住む私たちと何ら変わりないところだった。

 雲の上で生まれ住んだ私たちの言い伝えによると、


 “地上とは地獄である。人間が争い合うことでしか自らの意志を伝えることが出来ない愚かな場所である。その大地は炎で包まれ。血の海は見なれた光景である”


 これは嘘だと最近になってようやく分かったのである。

 なぜなら、“天馬”か、もう一つの天空魔法学校を卒業するまで、私たちは地上との接触を禁じられている。その接触が許されるのが、学校内でもトップクラスの成績を残す一部の生徒が自主的に始めた『エアリアルスカイヤー』とよばれる集団。

 その一人がそれを証明して見せたからである。


 その集団に入学直後から選ばれ、私の憧れでもある“ムラサキ・フォンアインス”さん。

 彼女が、ある過程を経て地上の人と深く短い関係を結んだことで地上は守るべきものと私たち天馬の生徒たちは思ったのである。

 それからエアリアルスカイヤーになれる生徒の範囲が広くなり、私も地上の人を助けてあげるべく降りてきたのである。





 ☆

 一時の戦火を超え、俺たちは次なる休憩所にいた。


「ほら、助かりました!」


 えっへんと胸をはる少女――アウは、戦場を乗り越えた男たちの前で威張っていた。

 張るだけの胸もないし、行動もしていない。

 必死に寿命を延ばしてきた俺たちの努力を評価して欲しい。

 相手は戦車こそ用意していなかったが、こちらの倍の数で圧倒してきた。そこへ勇猛果敢な俺たちは、名前以外何も知らない女の子を守り通すために死力をつくしたのだ。

 攻撃開始の前に、相手にこの子のことを訴えたが反応なく銃弾の雨が飛び交った。


「だからあの状況から生き延びることができた! 必死にこの休憩所まで身を隠しながら走って、両手の数くらいの人が生き残れたのです!」

「そういうことをいっているんじゃない。全員生き残れたのは奇跡だよ! 最後の最後に奇跡が起きたよ!」


 どこのどいつだ、こんな小さな子供に変なことを教えたバカは。

 そしてこの子はどうしてこの外見で日本語を――いや、そのことはまず良しとしよう。


「……ん?」


 何かを思い出したようにアウは大きなフードを目深に被る。

 容姿や視線が全く分からなくなるが、アウが周りをキョロキョロ見回しているのが分かる。


「……」


 この子は一体何をしているのだろうか。

 俺は一つの答えを導き出した。その子は身を隠すように振る舞っている。その正体はさっきまで見ていた通り、外国人だろう――恥ずかしがり屋なのかな。

 そしてこの子は始めになんと言っていた。


「――私じゃ役不足でしたか?」


 別に俺たちはこの子に助けられたわけじゃない。

 なら、この子はいなくても変わらなかった――といえば大ウソだ。もしこの子が今朝、突然現れなければ、こうして俺たちが生き残る事はなかっただろう。

 途中でこの子が「私はそこらへんの人より十倍くらい強いですから!」と叫んでいたが、それなら俺は君の十倍強いからスーパーマンか、と言い返しそうになったがそんな余裕はなかった。

 だが、まだ生き残れると決まったわけじゃない。


「もうここはおわりだ。残りの兵も全滅した。……だからこそ、その亡霊である私たちはここから生き延びるために家族たちのもとへ帰ろうと思う。どうだ、みんな賛成か!!」


 相手国の初撃を防ぎ、ここまで逃げてきたにすぎない俺たち。

 その中の一人が士気を上げようとするが、もう限界を超えた俺たちにそんな余力は残されていない。こうして話しているだけで精いっぱいだ。


「賛成です!」


 少女がそう答えて、杖を手にする。

 崩れた天井の隙間から洩れる陽の光に、少女の髪がキラキラと輝くと同時に聞き慣れない言葉が聞こえてきた――が、それは弱者が強者から逃げ出す悲鳴に近いものへと置き換わっていた。

 外の音を合図に俺たちは飛び出した。

 このまま中にいては、関係のない子供まで巻き込んでしまうからな。



「全員で生き残る! 少なくともこの子だけは家に返せるように頑張るんだ!」

「おうよ!!」

「がんばろうゼ」


 戦車、戦車、戦車と、人では敵わない圧倒的な戦力差があっても、奇襲をして逃げるくらいの事はできる。

 その一瞬のすきをついて武装した男たちは進んでいく。

 案外簡単に事は進み、いわゆる“デッドライン”と呼ばれる境界線まで残り数キロ。

 隠れながら進めば二、三時間で、戦争する相手が手を出せないところまでいけると想像してしまう。


「やっぱキツイゼ」


 一番若い男がそう口にした。


「ヤバいゼ、ヤバいゼ」

「あれれ、逃げ出しませんね」


 こうして逃げていられるのは、俺たちの隠されたど根性の覚醒と、相手国がまた兵士のみの軽装備で来たことだった。

 休憩所から飛び出してすぐに見た光景は、既に慌てている敵兵と、その場に何かあったのではないかという地点に残された火柱だった。

 上空で大きな翼をはばたかせているような風がその場に吹き荒れているおかげで、俺たちは容易に突破することが出来た。

 空に向かって手を振り「ばいばい、またね」といっている少女は、いつの間にかついてきてしまった。


 まさかその子が“ドラゴン”なる空想上の生き物を呼び出すことが出来る――天空魔導師の中でも特異な存在とは彼らが知る由もない。


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