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ときまるR ―光に導かれし者たち―  作者: 橘西名
地上に降る天空の星ボシ
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いつわりの歌姫

 ここが作られた世界というなら受け入れよう。


 偽りの世界で笑えるのなら、盛大にふざけてやろう。


 偽りの世界で悲しむなら、後悔するくらい大泣きしてやろう。


 偽りの世界がわたしたちの世界なら……それは消えてなくなるべき場所なのだろうか。



 by Lの称号を持つ魔法使い“ムラサキ・フォン・アインス”とWの称号を持つ歌姫“――”







 唐突な言葉だった。



「今度みんなでデッドライン近くに行ってみようと思っているんだけど……紫さんもどうかな? えっとね、“デッドラインに潜む謎の歌姫”ってやつで――ここ数カ月間でその場所だけが平和なままなんだって」



 仕事明けで一睡もせず学校に来ていたため、面倒に思ったが。


 “せっかくの誘いを断るのは、余裕のある女失格じゃん”


 と誰かに言われそうなのでその誘いに乗った。



「のるんだ?」



 理由なくムカつく声だった。


 その声の主は、紫朱音の仕事仲間である。


 名前は、黒井(くろい)(げん)


 職業マネージャーである。



「しょうがないじゃない。あなたのせいよ」


「ツンな君も魅力的だけど、次の仕事はもっとハードな役に決まったよ」


 紫はクロから薄い本を受け取る。

 それには“戦場をかける歌姫”と書かれていた。


「……ふーん。歌がメインの三流番組らしい企画ね」



 紫の職業は、学生――もとい、この間、偶然出場したのど自慢大会でスカウトされてから“歌手”としても活動している。

 主に、本人の意思を尊重して、戦争の時代で数少ないドラマに役者として活動の範囲を広めていた。


 黒井玄が紫朱音のマネージャーを若干、十六にして勤めている理由は、また機械があれば。




「――そうだ。少々危ない場所に行くのは、マネージャーとして見過ごせないが。残念ながら忙しくてついていけない。代わりに、これを僕だと思ってもっていってくれないか。ピンチになったときにだけ、この紙を破るんだ」



 思い出すと、なんとなく気持ち悪かったので、カバンにその紙を突っこんだまま。

 紫は約束した時間に間に合うように家をでた。


 デッドラインとは、学校側からは、戦場と一般人とを分ける簡単な仕切りだといわれている。


 故にそれは、それほど重要な場所じゃない。


 本当の戦場は、そこから何十キロも先に広がっており、流れ弾こそ気をつければほとんど安全なのだ。


 先ほど、平和といわれた理由は、ときたま現れる漂流兵士が、ちょっとした騒動を起こすこともあったが、あるときからそれもある場所にだけなくなったからだ。


 ちょうど学校から一番離れたデッドラインが、ここにあたる。



 紫を含め、男女五人がここに来ている。




「あわわ……家の壁に大きな穴があいてるよ。それになんだかべたべたしたものが……」


「へへん、このくらい俺にだってできるさ。そこら辺に落ちてる手榴弾の安全装置を外して、ひょいっと投げてやればな」


「ちょっと、やめてよね! あんたバカなんだから、少し間違えただけで、カチッ――ドカンってなりかねないんだからね!」


「さっさと紫以外の歌姫様を見つけて帰ろう。早く帰って――ミサイル」



 個性的なメンツが集まっていた。



「ちょっと待って! 何か聞こえない?」


「ミサイル落ちてない?」


「黙れ、マッドサイエンティスト――それより、本当に何かが聞こえる」



 クロの次にムカつく奴を黙らせたから、みんなで耳を澄ませてみる。

 すると、本当に人の歌う声のようなものが聞こえる。


 ここは人が住むような場所じゃない。

 これが噂のリアル歌姫。



 嫌なことがありやけくそで出場したのど自慢から歌姫と呼ばれるようになった紫は、少しだけその人に会ってみたかった。




 その思いは、不運にも一発に弾丸で断ち切られることとなる。


「みんな、逃げるぞ! 絶対に死ぬなよ!」


「わ、わかってるわよ、大バカ! あんたこそ死ぬんじゃないわよ!」


「どうせ死にぞこないの流木のような輩だ。一番心配な“あわわ”な人は任せろ。たくましい紫も死ぬなよ」




 思い同じにして、一部を除いてみんなが散り散りになった。

 不運だったのは、発砲してきた人が一番最後に散っていく紫を追いかけたことだった。



「面倒なことになったわね。上に逃げてきたから逃げ道がもうない……飛び降りる勇気もない」


「そこのお前! 何者なのか答えろ!」



 兵士の男が、携帯している何かの画面を見ながら叫んでいる。


(見ればわかるだろバカ。どう見ても学生でしょうが!)


「年上に向かってバカとは聞き捨てならんな!」


「そんなこと言ってない!」



 心の声を読まれる紫と男の距離は、階段一階層まで縮まっていた。



「もういいわ。やけくそだ!」



 紫はカバンの中にしまっておいた紙を握りしめる。

 破る、なんてことは忘れていた。


 だが、この世の真の姿が、紫の手のひらで現れ始めていた。


 穴のあいた壁の隙間からそれは力を採取していく。

 紫の手のひらには、沈みゆく夕陽を集めたようなオレンジ色の光が灯る。



「おい、きさま!」



 それが一筋の光となって、紫の手のひらを鏡のように反射して男に突き刺さる。


 眩しいくらいに光は強かった。



「やはり、そうゆうことか! この反応は!」



 だが、その光に戦闘力など備わってなく。

 ただの目眩ませ。


 男は拳銃を構えた。

 まるで、ここで倒しておかないと後々脅威になる存在を打ち滅ぼそうと。



「待って……こんなところで死にたくない。待ってってば!」



 カッ――銃弾から逃れるように紫は横に飛んだ。


 勢いをつけすぎてそのまま転がってしまう。



 カッ――起き上がりながら飛び、紫の足元に銃弾は突き刺さった。


 男は銃弾を装填しながら、唯一の出口である階段を塞ぐ。



「……これで最後だ。潔く死んでくれ」



 空が星の光で埋め尽くされる前。

 赤色が混じる空に、声が響く。



「黄龍!! あそこにいる人を守るのよ――ソニックブリット!!」



 風の刃が男の手から拳銃を弾き飛ばす。


 引き金が引かれる寸前で紫は何者かに助けられる。



「そのままフレア!!」



 炎の渦が紫と男の間に立ち、男は階段を下りてそのまま逃げていった。



 その場に立ち尽くす紫は、天から舞い降りた少女と会話をする。



「お久しぶりです、ムラサキさん。偶然にもあなたを助けることができて光栄です。天空魔法学校、三年主席の、ムラサキ・フォン・アインスさん」



 紫は、自分について知らないことが多すぎた。


 手の平に集まった光も、それが自分の通ってきた世界を再生したものということすら分からずに。



「さぁ、帰りましょう。わたしたちの空へ」


くろムラサキ――メインキャスト:紫朱音(戦闘力?)、黄龍と姫っち(合計800ちょい)。


あまり気にしていませんが、上下関係(天空魔法学校の成績順位)を考えるときの参考までに。


作者のメモていどに。






 あとがきとしては、『紫、空へ渡る!』のような感じになる予定です。

 地上は危ないですから。

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