主人公じゃないけど魔法使い
メインキャストだけど、主人公とまではいかない女の子なので……。
あくまで予定の話ですけど。
一時の戦火を超え、男たちは休憩所にいた。
「ほら、助かりました」
えっへんと胸をはる少女も男たちの中にいる。
張るだけの胸もないし、行動もしていない。
男たちがある意味必死に逃げて、今ここにいる。
「しょうがないじゃないか。息子と同じくらいの子供が、あんな場所にいるのを黙って見過ごすなんて」
「だからあの状況から生き延びることができた! 必死にこの休憩所まで身を隠しながら走って、両手の数くらいの人が生き残れたのです!」
「そういうことをいっているんじゃない!」
「……ん?」
碧銀の髪を大きなフードに隠している少女は、男を無感情に眺めている。
男は近くの恐怖に絶望しつつも、使命感に心が揺さぶられていた。
自分の子供を守りたいという衝動。
その気持ちに、周りも応えるようとする。
「もうここはおわりだ。残りの兵も全滅した。……だからこそ、その亡霊である私たちはここから生き延びるために家族たちのもとへ帰ろうと思う。どうだ、みんな賛成か!!」
「……ん?」
自分たちの事は死んだことにして、奮起する男たちと、無表情に尽くす女の子。
その状況が、命を繋ぐ戦いの始まりを告げていた。
男、約8名は最後の戦いと決めた戦地に赴いていた。
元々“戦場”と呼ばれる所に来ているのだから、初めから決心はしていたけど……今回のは少し違う。
“命をかけて誰かのために”と
“少しでも自分たちが長く生き残るために”の違いだ。
生きていると実感できるのは後者だ。
数が少ないから最初の一撃で逃げのびることができれば成功。
そこで生き残れなければ本当に全滅。
敵陣を右から崩し、右から抜ける。
簡単に言ってしまえばそうゆう作戦。
計九名の戦士は攻撃を開始した。
「全員で生き残る! 少なくともこの子だけは家に返せるように頑張るんだ!」
「おうよ!!」
「がんばろうゼ」
「……んん?」
戦車、戦車、戦車と、人では敵わない圧倒的な戦力差があっても、奇襲をして逃げるくらいの事はできる。
その一瞬のすきをついて武装した男たちは進んでいく。
案外簡単に事は進み、いわゆる“デッドライン”と呼ばれる境界線まで残り十キロ。
隠れながら進めば二、三時間で、戦争する相手が手を出せないところまでいける。
男たちは休憩を短く取りながら進んだ。
「これからどうするつもりです?」
女の子の質問に男たちは明らかに黙り込んだ。
なぜなら、もう少し先が一番の難関。
武装した兵隊と数台の重戦車が守りを固めた最終ラインなのだ。
なるべく考えないようにしたことである。
「やっぱキツイゼ」
一番若い男がそう口にした。
一時休憩小屋に入る。
偶然近くに見つけ、まだ無事な施設だと思ったからだ。
「ヤバいゼ、ヤバいゼ」
その施設は文字通り、罠だった。
男たちが入ってすぐに多くの足音が聞こえ、すぐにそれは囲まれてしまった。
もっと重いキャタピラ音も聞こえ、その主砲もこの施設に狙いを定めている。
「……ん? (片付けちゃって、お願い。サラマン、もちろん殺しちゃダメだよ)」
無表情の下で怪しい考えを巡らせる少女も小屋の中にいた。
音は、急に止み、男たちの意識も昏倒する。
無表情な少女だけが、見下ろすように男たちを眺めていた。
***
小屋の周りは聖なる炎で囲まれていた。
そのため、小屋の中の温度も瞬間的に五十度を超え、弱っていた人が耐えられず倒れてしまった。
なにぶん、天空の竜は手加減を知らないものだから。
竜召喚士という類の者に入る少女としては、しまった、と思った。
「だいじょうぶですよー。聖なる炎は助けを求める人を戒めはしませんよー」
仲間からはある意味“姫っち”と呼ばれる少女と男たちのプロローグ。
もうしばしお付き合いください。