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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
一章 黒鉄竜編
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6 資金稼ぎだるいわー


アヤカが始めた次の修行は簡単だった。


今までの修行をもっとハードにして続ける。

それだけだったが、それで十分だった。


〝気〟の修行で雷気はとっくに身につけた。


その〝雷気〟は自分でも驚くほどにあっさりと身に付いた。

どうやら〝気〟の力に覚醒したことで、アヤカの中に経験値として眠る潜在能力の一端が解放されたらしい。


このことをジルに話したら、またいつものように呆れ混じりのセリフが返ってきた。


「まーたあんたはとんでもないことやってるわね。〝ライキ〟って要は魔力の属性付与(エンチャント)でしょ? よくそんな王宮遣えのエリート魔法使いが使うような高度な技術を独学で覚えられたわね」


とのことだった。

……なにを言っているのか脳筋ドアホのアヤカにはさっぱり分からなかったが、恐らく彼女は商売の話をしているのだろう。


話を戻して。

雷気を身につけたことで本格的に雷鳴拳の修行が始められるようになった。


「えーと、まずはどの技から学ぼうかな?」


雷鳴拳の技と奥義と極意の全てはアヤカの記憶と魂に刻まれている。


図書館に眠る本の山のように存在する脳内に記憶されている数々の雷鳴拳と派生流派の技は、あまりにも数が多すぎる。

どれから手をつけようかと悩むほどに。


「あー。 うーん。 マジでどれからやろうかな」


魅力のある技や奥義の情報に埋もれて頭を悩ませて、瞑想の体勢で考えること小一時間。


結局、初歩の奥義である〝雷鳴活性〟からやることにした。


この技は高出力の雷気を体内に留めて使い手の神経、筋肉、骨格、内臓を細胞レベルで強化する技だ。

雷気で活性化された身体機能は使用者の潜在能力100%以上の力を引き出し、強化された細胞はあらゆる毒物、薬物、細菌、ウイルスを無害化する。


強化倍率は技使用者の元々の身体能力、肉体強度に依存する。


欠点としては、強化された肉体は急激に代謝が上がるのでなにかしらの形でエネルギーを取り込めないとあっという間に餓死することだ。


死ぬと言っても、一日中飲み食いせずに戦い続けない限りは平気なので、大した欠点じゃない。


第一、その少しの欠点をカバーするための技もキチンと用意されている。


自然界に存在する〝気〟を取り込んでエネルギーにすることで、食べ物も水も必要無くなる技〝捨食〟という仙人の技を平行で使うのだ。

旅に危険は付き物だ。秘境や辺境の冒険では何日も食事ができない状況だってあるかもしれない。

地味な技だが、習得しておけばそういうときに役に立つ。


この二つの奥義の情報を記憶からほじくり返し、前世のアヤカの見よう見まねでやってみた。


今世のアヤカ………というよりもエルフ全般が〝気〟のコントロールが得意な種族なのだろ。


二つとも始めたその日に覚えることが出来た。


夕暮れになり、ナモナキ森に夜が来ようとしていた。

夜の森は危険なモンスターの巣窟だ。………一般人にとっては。


「ふう。 今日はここまでにして―――――」


―――モンスター狩り(ハンティング)の時間だ!


モンスターたちの悲鳴が月に照らされた夜の闇を木霊した。


アヤカの新技の稽古に夜通し付き合わされた哀れなモンスターたちにアーメン。





朝になると、森の広けた場所は死屍累々のモンスターの山だった。


「このツノウサギは角とお肉と毛皮が売れる。 このヤツメオオカミは毛皮が使える。 ハッグベアーも毛皮取れるしお肉が美味しい。 リクガメは甲羅が鎧の材料になる」


物言わぬモンスター(元々喋らないが)の遺骸から鼻唄混じりに採れるものをありったけ剥ぎ取る。


夜のナモナキ森は辺境ゆえに希少モンスターの宝庫だ。

これだけのモンスターを狩れば十分にお金を稼げる。


スタローンさん家のお父さんはこれらを金貨二十枚(およそ二十万円)という高額で引き取ってくれた。


これは孤児院に払う生活費であり、将来ための軍資金だ。


いつかこの村を出て自立するときに、貯蓄がないと色々困ると、ジルに薦められたからだ。


「冒険? このわたしには体と拳一つさえあれば十分よ!」


完全に世の中を舐めてるとして思えないことを豪語して憚らないアヤカに、ジルはぶちギレた。


「え、お金貯めてないの? バカなの? 路銀稼ぎは旅の基本でしょうが!!」


商人の娘が言うと迫真の説得力が生まれる。


アヤカがなにか反論しても、さらに上から正論でねじ伏せられた。


ジルの気迫に呑まれたアヤカは、あまり気は進まないながらも資金を貯めることにした。


「はう……。 だるっ。 でもドラゴンを倒す旅をするためだから」


眠気をこらえて、アヤカは黙々と剥ぎ取りを続けた。



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