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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
五章 アヤカは帰ってくる
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52 帰還者アヤカ


昨晩の信三の怪しい通信はこっそり起きていたアヤカに盗み聞きされていて、その事を不審に感じた彼女の手により、清々しい海辺の朝っぱらから尋問という名前の拷問を受けることになっていた………………………なんてことは無く、誰にも悟られずに信三は朝方には岩に背中を預けて普通に眠りこけていた。


水平線の先には暁の太陽が昇り、新しい朝が来た。希望の朝。

名も無き朝だ。


他の皆は寝ているが、中身はファンタスティックパワフルお婆ちゃんのアヤカだけは早起きだった。

仙術・捨食を習得してからここ数年は眠ることが無かったので、適度な睡眠で頭がリフレッシュしている。

ここまでスッキリした気分は転生後に味わったのは初のことだ。


「う~~んよく寝た。 久々に寝てみたら気分良いわね。 ストレス発散にいいかも」


肩をぐるぐる回して骨を鳴らして凝りを除く。

やはり人間には精神を休ませるために適度な睡眠が必要らしい。


「あれ? みんなまだ起きてないの?」


朝日と同時に起きるアヤカが老人や社畜並みに早起きなだけであって、普通はこんな早朝は寝ているのが当たり前だ。

とは言っても、そんな常識は横合いから殴って砕く。

わたしに合わせろ、わたしが常識(ルール)だを、世紀末拳王を地で行くアヤカは他人の事情など考えないし、興味もない。

だが、微かにだが母性本能は、それだけは残っているのか、子どもにだけは無意識に優しくするのがアヤカという女傑だ。


ゆきが起きるまではまだ時間があるから、朝ご飯の準備でもしとこうかと、海に潜っていった。


今日の朝飯は焼き魚にするつもりだ。醤油も味噌も無いが、塩だけは無限に採れる。

ゆきが自分の手料理をどんな顔をして食べるのか、想像したらアヤカの頬を無意識に緩んでいった。




アヤカが漁に出てから沖合いから大砲のような音と天まで刺さる水柱が絶えずなり続ける。


ドラゴン化したミステリアと同等の巨大な体躯を誇るサメの魔物だ。アヤカには知るよしもないが、この魔物は日の国では〝海人喰い〟という名前で知られる伝説の怪物だった。


クラーケンやテイオウイカという水棲魔物とも覇権争いをすることもある魔物だ。アヤカがこれまでに倒してきたゴブリンや天狗とは比較にもならないほど強力な怪物なのだが、彼女には関係無い。


「サメ程度がなんだってのよ! シャークネードじゃないんだからね!」


噛みついてくる海人喰いの顎を力尽くでこじ開ける。

一般に4~5メートルサイズのホオジロザメの噛筋力(噛む力)が650㎏前後と言われている。人間の頭蓋骨の強度はスイカと同レベルとされており、それをまとめて噛み砕ける数字だ。

そして、この海人喰いは三十メートルを超す巨体。シロナガスクジラ並みだ。生物の筋力はサイズに比例し、身体が大きくなるほど力も強くなる。

この怪獣サイズのサメの力はもはや計り知れないレベルにまで達しているだろう。

人間サイズのエルフなら筋力でも骨格でも到底敵わないだろう。


だかしかし、それがどうした?で文字通り一蹴するのがこの女だ。


「わたしには関係無い。 そう! 関係無いのよ!」


アヤカには大きさの暴力など通じないのだから!


「お前は! ただの! フカヒレだ! わたしたちの朝ごはんに生まれ変わって食われろ!」


こじ開けた口から体内に侵入し、胃袋にまで到達すると雷気を解放する。スタンガンや電気椅子、この世界の電撃魔法などとは比べることすらおこがましいほどの電力。自然界に存在する落雷数十発分の威力の殺意しかない電撃。

体内から海人喰いの感電させ、脳の末端神経まで焼き切るには充分なパワーだ。


当然ながら、アヤカの空っぽな頭よりはマシな重さ数十グラムの脳を破壊された海人喰いは、湯気を上げて海に浮かぶはめになった。海水からも湯気が出て周囲の魚が茹で上がって浮かんでいることからアヤカの電撃の威力が伺える。


「大漁大漁。 これでみんなお腹いっぱいね」


満足げにホクホクと海人喰いと魚を回収して陸に上がる。

海人喰いを倒したことでこの海域の新たな支配者にアヤカはなったのだが、大物さえ討伐すればもう興味もない。


「てかこれもう全部調理済みじゃん。 やったー!」


腸も抜かずに血抜きもしてないので、もちろん不味い。海水魚は寄生虫の心配もあるが、焼き殺しているから問題ない。だが不味い。が、舌までバカになってるアヤカ、アヤネ、青銅竜、ミステリア、ゆきたちは美味い美味いと言って食えるだろう。

ただ一人だけまともな飯で舌を肥えさせいる男は腹を空かせることになるだろうが。





「「美味い!」」


「うまいっス!」


「おいしい!」


「俺は不味いと思うけどよぉ………」


朝食の席、サメのフカヒレを齧っての感想だ。

上から順番にドラゴン組、アヤネ、ゆき、信三。案の定、信三だけが焼いただけの朝食に不満をこぼしていた。


「あれ信三さん食べないの? なら僕が貰うね」


青銅竜が信三の食事をひょいっと盗む。無精髭を弄るだけで信三も抵抗しない。

この盗み食いの相手がアヤカやミステリアだったらこの緑色のドラゴン少年は海に沈む金属片となっていたであろう。


アヤカはゆきの面倒を見て、アヤネとミステリアは互いに飯を奪い合ったり、アヤネが頭から砂に埋められたり、最年少のゆきが口を閉じて黙々と食べているだけなのに、大人たちがアレ過ぎるせいで結果的にはこの中で最もお行儀よく食べていたりと、楽しい朝が過ぎた。



腹が膨れた彼らはナモナキ村への空を飛んでいた。

アヤカと違って睡眠や食事をとる必要がある他の人間組に気を使い、青銅竜とミステリアはかなりゆっくりなフライトをすることになった。


「まさか行きは私とあんただけだったのに、帰りはこんなにも大所帯になるとは思いもしなかったわ」


『妾もじゃ。 思い返すと楽しい旅だったのぉ』


滞在時間が長かっただけに、それなりに思い出もある。

行き当たりばったりノープランのぶらり旅。

青銅竜と戦い、他の人間を蹴散らし、アヤネを手下にしてゆきと出会う。


「(あれ? これだけで完結したぞ?)」


大したことはしてなかった件。










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