48 反撃
千年間かけて力を蓄えてきた古竜たる森林竜でさえ、雷挺モードの力には敵わなかった。
ましてや、戦乱の世で道半ばで倒れた侍や戦火に翻弄されてこの世に未練を残した亡霊がアヤカに敵うわけがなかった。
この世界の支配者が誰なのか。
彼女はその疑問の答えを知っている。
この世の生物界の頂点にして、生まれた瞬間にこの世界の生物の強さのランクを一つ下げた女(本人談)
それが雷鳴拳の開祖にして拳法の達人、人間を超越した力を得た超人。
「アヤカ・ローレライ様とは!! わたしのことよ!!」
雷鳴帯びる拳が空を打つ度、アヤネとゆきのすぐ近くに落雷が落ちたと錯覚させるほどの轟音と強い閃光が走る。
元来小心者のアヤネはその音と光への強烈な恐怖から身体が震え、腰が抜けて立っていられない。
かといって地面に伏せれば大地を通して心臓や脳へ雷が通電することを嵐の夜に父の死から学んで知っていた彼女は、ゆきを抱えたまま震える身を必死に起こしていた。
ゆきはアヤカがなにやらかっこよく変身して強くなったことに興味津々だ。
例えるなら、ヒーローショーを食い入るように真剣に見る幼児のように、アヤカの一挙一動を見逃すまいと真剣に見つめている。
「おねえちゃんがんばれー!」
声援を飛ばすのはまさにヒーローショーそのものだ。
「しっ! こっちにも悪霊どもがきちゃうっス」
アヤネが口を塞ぐが、ゆきはその手をぺろぺろ舐めてくすぐる。
「いや手ぺろぺろしなくていいから! とにかく口閉じてて!」
「はーい」
そうやって茶番を演じている間にもアヤカの雷神のごとき活躍は続く。
正面の敵を腕を払うだけで消し飛ばし、背後から錆びた槍で突こうとした侍を雷挺モードの自動迎撃機能で焼き払い、近づく敵は手当たり次第殴ったなぐって撲ってなぐって殴る。
拳に亡霊の黒い血液が付着しようが、相手が鎧を着用してようが知ったこっちゃない。
その上から雷撃と拳で捩じ伏せるだけだ。
久しぶりに今までお預けされていた情け容赦ない暴力を楽しんだ跡地は亡霊たちの遺品と、塩の塊が残るだけだった。
「亡霊って消えたら塩になるのね。 清められた、ってこと?」
「そうらしいでスね。 この塩は霊媒師がお清めやお祓いに使うやつと同じものでス」
「ぺっぺ、しょっぱい……」
塩を舐めて敏感な舌で種類を特定するアヤネと、彼女の真似をして塩を頬張って涙目で吐き出すゆき。
「お水飲みなさい」
竹の水筒(※アヤネの水)で口をすすぐ。
さらっと水をすられていたが、哀れな僕っ娘は全く気づかなかった。




